大河ファンタジー漫画『不滅のあなたへ』完結へーー『聲の形』作者が人間の本質を描く“現代版『火の鳥』”

『聲の形』の大今良時が描く『不滅のあなたへ』が6月4日発売の「週刊少年マガジン」27号で完結を迎えた。
2025年10月にはNHK総合でテレビアニメの第3期が放送予定の人気作だが、漫画・アニメファンでなければ知らない人も少なくないかもしれない。本作は“現代版『火の鳥』”とも評される壮大な大河ファンタジーだ。
物語は“観察者”という超越的な存在により、地上に不可思議な“球”が投げ入れられるところから始まる。その球は接触したあらゆるものの情報を収集し、その姿に変化することができた。やがてオオカミの姿になった球は、豪雪の大地でひとり暮らす少年と出会い、ともに豊かな土地を求めて旅に出る。しかし、何度死んでも再生する“球”と違い、有限の命を生きる少年は力尽きてしまうのだった。少年の姿を獲得したその球は、世界を彷徨う永遠の旅を始めるーー。
作中では、“球”が人間の姿を獲得したのは少年から受けた「刺激」によるためだと説明されている。オオカミの姿になって初めて「意識」を手に入れた“球”は、少年が夢見た未知の世界へ旅に出るが、それは「不滅」であるがゆえに出会いと別れを永遠に繰り返すものになる。アニメ化で大ブレイクを果たした人気ファンタジー『葬送のフリーレン』でも、悠久の時を生きる存在であるがゆえに出会いと別れを繰り返すエルフのフリーレンが、“ほんのひととき”を共にした人間の勇者・ヒンメルに強い影響を受け、旅の中で変化していくが、本作の“球”にも大きな出会いがある。少年の次に出会った村落の少女に「不死=フシ」と名付けられ、徐々に自我を獲得し、人間に近しい存在へと成長していく。
超越的な“観察者”の視点、もともと完全に無垢な存在であるフシの視点から、さまざまな時代、文化、社会が俯瞰的に描かれ、そこに生きる人々の愛おしさや愚かしさがフラットに伝わってくるのが、本作の大きな魅力だ。さらに、壮大な物語のなかで、マクロな視点では見逃されてしまう切実な何かをフシが発見し、読者に投げかけていくのが面白い。「人」を描くことに長けた大今良時という作家が大河を描くとこんな作品が生まれるのか、と驚く人も多いだろう。
フシは永遠の旅の果てに何を見つけるのかーー少年漫画誌の連載作品だけあって、記憶を奪う謎の生命体・ノッカーとの戦いなど、キャッチーな見どころも多い本作。最終25巻が発売になる8月15日に向けて、この機会に一気読みしてみてはいかがだろう。






















