能楽×サスペンス×百合クロニクル? ジャンル分け不能、柴田勝家『秘曲金色姫』が面白い

以後、現代と過去が交錯する物語が次々と語られ、室町時代から令和へと繋がる、長大な時間軸の『金色姫』の物語が露わになっていく。ただし、「落伍」が日記、「小石川」が大河ドラマのストーリー、「千穂太夫」が船戸創という歴史小説家が執筆中の小説と、過去パートは、どこまで真実と受け止めていいのか分からない。さまざまな時代を往還しながら、しだいにパズルのピースが嵌まっていくと、ファンタジーやホラーと思っていた内容が、ミステリーへと転じる。といっても『金色姫』に関しては、合理的に割り切れない。迷宮を彷徨うような読み心地が、本書の大きな魅力になっているのだ。昭和伝奇ロマンの収穫『ヒト夜の永い夢』を始め、幅広い作風を誇る作者らしい、ジャンル分け不能の面白い作品なのである。
そうそう、百合クロニクルの部分について触れるのを忘れていた。しかし、ここにも仕掛けがあるので、詳しいことは話せない。ただ、エピローグとなる「附」で、たしかにこれは百合物語でもあると納得できたのである。























