トランプ関税、株価の乱高下……金に惑わされるのは人間の性? 福本伸行『銀と金』から学ぶ、深層心理

『銀と金』お金に惑わされるのは人間の性?

「勝つ」ためには人間性を捨てるべきか

 Googleで「投資 鉄則」と検索すると、「株価に一喜一憂しない」といった記事が散見される。感情を排した意思決定こそ、投資における勝利への道筋と考えられているのだろう。

 では、資本主義社会で勝ち抜くために、徹底的に人間性を排除すべきなのか。この点についても『銀と金』は示唆を与えている。物語の序盤、平井が森田を仲間に引き入れるシーンだ。

 平井は森田の目の前に現金5,000万円を差し出し、ある取引を提案する。とある人物の殺害を手伝ってほしい。相手は死期の近い老人で家族も死を望んでいる。犯行は事故に見せかけるし、罪に問われない手筈も打ってある。この計画に加担すれば、対価として5,000万円を与え、仲間にもしてやろう、と。

 森田は激高し、その場を後にする。しかし、しばらくして舞い戻り、土下座して「殺しなど出来ない!でも…この世界で生きたい…!」と懇願するのだった。

 その姿を目にした平井は森田の仲間入りを承諾する。殺害計画は森田の資質を見極めるための作り話だったのである。平井は「今の気持ちをよく覚えておくんだぜ。人を殺したくないという気持ちだ」と告げる。

 大金を目の前に冷静さを失うのが人間であるならば、利得のために人間性を放棄したくないのも、本来の姿なのかもしれない。

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