『ヒロアカ』スピンオフがアニメ化へ 本編と真逆の“非合法ヒーロー”を描く『ヴィジランテ』の魅力とは

『ヒロアカ』スピンオフがアニメ化へ

何もかもが『ヒロアカ』本編と対照的

 『ヴィジランテ』で重要なのは、やはり主人公・航一の生き様。彼は「個性」を持っているものの、とある事情によって、公認ヒーローになる夢を諦めてしまっている。この点は『ヒロアカ』の主人公・緑谷出久が、無個性にもかかわらず絶対に雄英高校への進学を諦めなかったことと対照的だ。

  出久はその不屈の意志によってNo.1ヒーローであるオールマイトに認められ、立派なヒーローへの道を歩んでいく。その一方、航一はプロヒーローになることを諦めた後も、「親切マン」として街中で困っている人を助ける道を選ぶ。そしてこの「親切マン」活動がきっかけで、ナックルダスターに目をかけられるのだった。すなわち唯一無二の存在に認められて日の当たる場所に出て行った者と、何者にもなれずそれでも日陰でヒーローになろうとする者、2つの全く異なる生き様が示されている。

  また主人公の師匠的なポジションにあたるナックルダスターは、『ヒロアカ』のオールマイトと対照的な立ち位置にある。世間の価値観に迎合するつもりが一切なく、普段から無精髭を伸ばし、ビールを浴びるほど飲む自堕落な生活を送っている彼の姿は、全国民が憧れる“平和の象徴”とはまさに真逆だ。そんなナックルダスターがいかにしてヒーローたり得るのかという点も、同作の大きな見どころと言えるだろう。

  さらに同作のアニメ版で注目したいのは、バトルシーンの描き方だ。「爆発」や「炎と氷」といったド派手な能力が飛び交う『ヒロアカ』と違って、『ヴィジランテ』は能力の強さに頼らず、その場にあるものを活用して機転で戦うスタイルとなっている。

  作者の堀越耕平が「一番好きなヒーロー」と語っているように、『ヒロアカ』のバトル描写はマーベル・コミックの『スパイダーマン』から多大な影響を受けているものと思われる。人間離れした能力を活かし、ド派手なアクションを繰り広げていく爽快感は両作品の共通点だ。

  その一方、『ヴィジランテ』のバトル描写は、DCコミックスを代表するヒーロー『バットマン』に近い。主人公側に派手な能力がなく、夜の闇に紛れてこっそりと相手に近づき、一瞬の隙をついて最小限の力で敵を倒していく。ゲームでいうとスニークアクション的な戦い方だ。

  そのほかにも、比較的安全な「学園」が物語の中心となる『ヒロアカ』に対して、『ヴィジランテ』はヴィランの影が蠢く「街」が舞台となる。さっそくアニメ版の第1話では、本編では考えられないほど治安の悪い出来事が描かれていたが、この先も予想できない展開が待ち受けていることだろう。

  さまざまな点で『ヒロアカ』本編と対照的な異色のスピンオフ『ヴィジランテ』。いかにして同作がアニメ化されるのか、その目で見届けてほしい。

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