『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』庵野秀明がやりたかったことは? 初期プロットから読み解くifの物語

『GQuuuuuuX』で庵野秀明が挑戦したことは

炸裂する庵野秀明の剛腕ぶり

 上映されたバージョンを見れば、「シャアがソロモン内に突入する」「しかしソロモンからの脱出に失敗し、ゼクノヴァが起きたことによってシャアが行方不明になる」という点を描くため、その他の要素を大きく削ったことがわかる。『GQuuuuuuX』本編はあくまでマチュたちが登場して以降の物語であり、その下地となる部分以外は切り取ったということだろう。展開のスピード感も増しているし、映像作品としては正解だと思う。しかしそれにしても、「3機のムサイを連結してブースターにしつつ、超高速でソロモンへと突っ込むソドン」のシーンはぜひ動いているところを見たかった……!

 一連の庵野版プロットと脚本を見て思うのは、思いつくだけのパロディ的要素を並べ、詰め込めるだけ詰め込もうという庵野秀明の剛腕ぶりである。単に独りよがりなだけではなく、ストーリー展開の面白さ・熱さにつながっているのはさすがだが、それにしてもやはりパロディを作らせた時の強いパワーは唯一無二だろう。このプロットも脚本も『GQuuuuuuX』本編の内容から発生する制約を受けていることは、ネタバレ防止のために伏字になっている箇所があることからもわかる。では「本当に制約なしで、庵野さんが見たい『機動戦士ガンダム』を作ってください」と指示したらどうなってしまうのか。見てみたいような、ちょっと怖いような……気持ちになる。

 さらに特典冊子後半の設定原案も、みっちりと濃い内容だ。本編では動くシーンすらなく秒殺されたガンタンクの詳細な姿は腕の構造の独特さに唸るしかないし、重量のあるガンキャノンを高速展開するための軽アーマーに関しては「これのオモチャがほしい!」と叫びたくなるデザインである。ユニットごとに分割できるようになっているムサイやチベと、ソリッドな一体型のマゼランやサラミスによってジオンと連邦の大型艦に関する設計思想の違いがわかるようになっている点など、見れば見るほど発見が多い。

 という濃い口の内容なので、今回の特典も必見の一冊となっている。もう何回も見たよ……という人も、『GQuuuuuuX』が刺さったならば入手しておいたほうがよさそうだ。配布が終了してしまう前に、ぜひゲットしてほしい。

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