橋本環奈&三浦翔平のバディはホームズ&ワトソンの関係性に? 『天久鷹央の推理カルテ』原作の魅力

同じミステリ小説が、実写ドラマ化とアニメ化の双方に恵まれた例としては、東川篤哉の『謎解きはディナーのあとで』、森博嗣の『すべてがFになる』、筒井康隆の『富豪刑事』、石田衣良の『池袋ウエストゲートパーク』などの例が思い浮かぶ。そこに加わったのが、知念実希人の医療ミステリ「天久鷹央」シリーズ(実業之日本社文庫)である。
まずアニメ版は、『天久鷹央の推理カルテ』というタイトルで、2025年1月からTOKYO MXなどで放映中である。それに続いて、4月から今度はテレビ朝日系で実写ドラマの放映が始まることが3月4日に公表されたのだ。同じ小説のシリーズが、アニメ版の放送が終了してすぐ実写ドラマになるという例がこれまでにあったかどうか知らないけれども、稀有な例であることは間違いない。
もちろん、人気のあるシリーズだからこそこうした企画が成立したわけだが、では、何故このシリーズがそこまで人気を集めているのだろうか。まず、シリーズの基本設定を簡単におさらいしておこう。
主人公の天久鷹央は、東京都東久留米市にある天医会総合病院の副院長兼統括診断部部長の職にあるが、高校生や中学生に間違えられるほど見た目は小柄で童顔である(初登場時は27歳)。統括診断部というのは、鷹央の能力を活かすため病院の最上階である10階にわざわざ設置された部門で、更にその上の屋上には統括診断部の「医局」である彼女の家も建てられている。難解な事件が発生すると、好奇心の赴くまま、時には強引に首を突っ込んで真相を解明する。初対面の相手に「お前」と呼びかけるなど、その言動は一見高飛車そのものだが、彼女には自閉スペクトラム症の傾向があり、頭脳労働は得意だが場の空気を読むのは苦手な一面がある。
その鷹央の助手となったのが内科医の小鳥遊優である(読み方は「たかなし・ゆう」だが、鷹央からは「小鳥」と呼ばれている)。お人好しな性格で、暴走しがちな鷹央に振り回されつつも彼女のブレーキ役を務めているが、空手が強く、暴れる犯人を制圧することもある。エキセントリックな鷹央と常識人の小鳥遊のコンビは、アーサー・コナン・ドイルの作品で活躍するシャーロック・ホームズとジョン・ワトソンの関係を踏まえて描かれている。鷹央は天才だが必ずしも完全無欠の人間ではないので、そんな彼女に足りない部分を補う小鳥遊のような相棒が必要なのだ。
小鳥遊は人手不足の救急部に「レンタル猫の手」として貸し出されているが、当直で彼と一緒になることが多いのが研修医の鴻ノ池舞だ。天真爛漫だが、鷹央と小鳥遊の仲を接近させようとしているおせっかいな一面があり、小鳥遊にとっては「天敵」。意外にも合気道の達人である。
天医会総合病院は一族経営で、院長の天久大鷲は鷹央の叔父。病院の経営を優先しており、鷹央とは気が合わない間柄だが、彼女の能力は認めている様子だ。事務長の天久真鶴は鷹央の姉。常識的な人物だが、鷹央にとっては苦手な相手である。他に、事件に首を突っ込んでくる鷹央を快く思っていない田無署の刑事・成瀬隆哉、警視庁捜査一課の老練な警部補・桜井公康らが、シリーズの準レギュラーとして登場する。





















