『太田上田』コンビの“芸”は時事とどう向き合う? TBSの日曜改変を占う

太田上田の“芸”は時事とどう向き合う?

 TBSの日曜昼が40年ぶりに改編される。和田アキ子の冠番組『アッコにおまかせ!』が終了し、くりぃむしちゅーの上田晋也がMCを務める『上田晋也のサンデーQ』がスタートするという。TBSによれば、「あなたもニュースの当事者です!」をキャッチフレーズに、一週間のニュースを振り返りながら、「誰もが抱く素朴な疑問」に専門家が解説する、生放送の情報番組になるとのことだ。

 近年の司会者・上田晋也の活躍はめざましい。コンビ出演の『世界一受けたい授業』(2004~2024)や『しゃべくり007』(2008~)はもちろん、啓蒙的なトークバラエティとして機能しつつある『上田と女が吠える夜』(2022~)を足がかりに、2024年からは『24時間テレビ』の総合司会も務めている(ところでこれらはすべて日本テレビ系列だ)。熊本県の伝統ある公立進学校・済々黌高校から早稲田中退、うんちく王というインテリ芸人枠でブレイクした経歴で、TBSではすでにニュース番組のホスト経験もあるから(『上田晋也のサタデージャーナル』、2017~19)、今回の起用は抜擢というよりもむしろ順当という評価がふさわしい。

 だが一部の人々にとってこの起用は、なるべくしてなった、という以上の嬉しい驚きをもって迎えられている。一部の人々、それは『太田上田』ファンのことだ。

 『太田上田』は爆笑問題・太田光と上田のトークバラエティ番組だ。日テレ系列の在名テレビ局・中京テレビで2015年から続いている。全国ネットではないが、現在はYouTubeや各種配信サイトで(遅れやカットがあるが)観ることができる。

 この番組のファンが『サンデーQ』スタートのニュースに反応したのは、それによってTBSの日曜が『太田上田』に染まるからである。つまり爆笑問題が司会を務めるワイドショー『サンデー・ジャポン』から『サンデーQ』という、太田→上田のリレーが完成するのだ。『サンデーQ』の直後、13時から始まるTBSラジオ『爆笑問題の日曜サンデー』を含めれば、約7時間にわたって太田と上田がTBSをジャックすることになる。

 だからといってそこまで嬉しいか? という疑問が浮かぶかもしれない。たまたま同じ番組をやっている二人が、たまたま連続した番組のホストになるだけではないか、と。――それはその通りである。だがそれでも、このことを話題にしたくなるのだ。その理由はシンプルである。『太田上田』は面白いのだ。

『太田上田』が引き出す二人の魅力

 番組は二人のトークを基本とする。フリートークのほかお便りに答えたり、脱出ゲームなど企画が行われることもある。約半分はゲスト回で、古坂大魔王ら芸人仲間に加え、ミュージシャンの川上洋平([Alexandros])、声優の花澤香菜、小説家の宮島未奈など多彩な顔ぶれが出演している。ゲストの多くは番組のファンを公言していて、出演時にそれぞれの『太田上田』愛が披露されるのも恒例だ。

 とはいえやはり、メインは二人のおしゃべりである(番組ファンのゲストも口々にそう言っている)。したがって番組自体も実にシンプルな内容だが、『ボキャブラ天国』以来30年の付き合いになる彼らのやりとりは、それだけで安定して魅力的だ。

 その魅力を確認した上で、私が本記事で示したいのは、『太田上田』での二人のトークを考えることで、『サンジャポ』と『サンデーQ』の両番組をペアで楽しむための道筋を提案できないか? ということである。あるいは、『太田上田』ファンとして両番組をどう観るか? ということだ。以下ではそれを具体的に説明してみよう。

 フリートークでは太田がエピソードを語り、上田が聞き手に回ることが多い(7:3くらいではなかろうか)。太田はTBSラジオ『爆笑問題カーボーイ』でも相方の田中裕二に対して長尺のエピソードトークを行っており、同じ話題を繰り返すこともしばしばある。それでも飽きることなく楽しめるのは、太田そして上田のトークへの向き合い方を、『太田上田』は実によく捉えているからだ。

 太田はトークに前のめりである。比喩的にのみならず文字通りの意味でもそうだ。椅子に座りつつも、普段からの猫背をさらに前方へ傾けて、上田に対し、自らの喋りを一生懸命に伝えようとしている。上田は反対に、ゆったりと背もたれに寄りかかりながら、相槌を打ち、(だいたいはごくくだらない)ボケにつっこみ、ときにはすかし、あるいは泳がせたり、「今夜は血が見られそうだ」などといった発言とともに、太田のトークを番組制作者や視聴者の立場から俯瞰するような態度を示すのだ。言い換えれば、太田が常に語りと聞き手にひたむきなのに対し、上田はそれを第三者へと、外へと開こうとしているかに見える。

 こうしたあり方はラジオでのトークとは異なっている。『カーボーイ』でも太田の語りは前のめりだが、それを受ける田中もまた、そのフリートークに時間を忘れて乗っかっているように聞こえる(同調の「ね」を何度も口にする)。他のコンビ出演番組ではもっぱら田中が進行役を務めるが、ここではその責任を心地よく逃れているかのようだ。

 このことはひとつには、ラジオとテレビの違いが現れているだろう。ラジオブースという密室的な空間と深夜ラジオの聴取形態が、太田の一対一的な語りかけを強調するのに対し、開かれたスタジオで、カメラやスタッフという第三者を正面に意識しながら行われるテレビのトークでは、上田のような俯瞰的コメントが効果的に響く。

 だが他方で、太田のひたむきな語りは『サンジャポ』でもしばしば見られることにも注意を促しておきたい。彼はニュースに対するコメント役を担っているが、言い淀みや逡巡も隠さない長尺の語りはこの番組の特色だ。「炎上」もあるが、2019年の川崎無差別殺傷事件をめぐってのコメントなど、良い意味で話題になることも多い(お笑い芸人が誠実な正しさの代表者のように扱われることについては、私自身もお笑い論を世に問うなかで加担した自覚はありつつ、社会の蝶番が外れてしまっているような感覚を抱かないわけではないが、ともかく)。ここではテレビカメラもむしろ、クロースアップやスイッチングを通じて、太田の語りかけを劇的に演出している。とすれば『サンデーQ』もまた、上田独特のコメントを自分たちなりのしかたで演出することになるのだろう。したがって視聴者としては、時事に対する二人のコメントの、内容だけではなく様式における違いを味わうことができる。それは二つの番組をいわばTVショーとして味わうことだ。

上田の“司会芸”を楽しむ

 ところで上田はすでに、『サンジャポ』での司会経験がある。2021年1月24日の放送に、休養中の田中に代わって出演、その仕切りは大きな話題を呼んだ。「鮮やかさ」や「切れ味」といった語彙で語りたくなるもので、太田の逡巡とは対照的かもしれない。

 ただし『太田上田』ファンとしては、この司会ぶりを単に称賛するだけではない受容態勢を整えておきたい。それは、MC上田の司会術というよりもむしろ、芸人上田の司会芸を楽しむ、という姿勢である。

 上田の代役出演後、『太田上田』でその司会ぶりに触れるトークがあった。太田は「さすが日本一のMC」などと上田を称賛しながら、笑みを浮かべ、明らかに司会としての立ち居振る舞いを茶化している。上田も賛辞に応えたり謙遜したりと正面からのリアクションの体を取りつつ、その茶化しに自覚的に乗っているように見える。総じて二人とも、見事な司会ぶりというパフォーマンスに不可避的に伴う、芝居がかった臭さ、のようなものを、芸人としてネタにしているように思われるのだ。

 このことは一つには、上田の演劇的な司会ぶりをいわばボケとして楽しむことに結びつく。コンビでの立ち位置はなるほどツッコミだが、乗せられて(あるいは無茶振りをされて)芝居がかったキャラを演じるところに漂うボケ性に上田の真の魅力があることは、例えば『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』リスナーであればよくご存知だろう。『太田上田』でも、彼のトレードマークである「たとえツッコミ」を褒め殺し的にボケとして処理したり、唐揚げのものまねをさせる無茶振りを行ったりと、上田のボケ性を際立たせるくだりがしばしば見られる。そうであれば、『サンデーQ』での司会ぶりを一方では素直に期待しつつ、他方ではそれを笑いとして解釈する半身の姿勢を準備してみてもよいかもしれない。言うまでもないが、上田は司会者である以前に芸人なのだから。彼自身、こうした態度の重要性を、初のエッセイ『経験――この10年くらいのこと』(ポプラ文庫、2025)において「笑いに怒りは禁物」という観点で語っている(なお『太田上田』では同書もまた「ダサい表紙!」などと笑いの対象になっていて、半身の姿勢にやはり抜かりがない)。

 そしてもう一つには、この半身の姿勢を批判精神として保持することが重要になる。テレビ番組を仕切ること、それは権力行使のわかりやすい視覚化である。それに感服し、陶酔するとき、私たちは支配に対する盲従のスタートラインに立つことになる。したがって国内の政治的現状に鑑みたとき、上田という名司会者の起用がどのような帰結をもたらすかは未知数なのだ。牽強付会を恐れず言えば、そこにおいて彼の仕切りを相対化する『太田上田』は、支配への抵抗のポップなチュートリアルとして機能するかもしれない。この番組に何らかの社会的効用があるとすれば(なくてもいいのだが)、それはこうしたカジュアルな批評精神に由来するだろう――もちろん、権威を笑い飛ばすことがむしろガス抜きとして機能し、かえって支配を正当化するというよくある逆説には、十分に注意しなければならないが。

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