是枝裕和、江口寿史を魅了する、俊英・高妍の最新作漫画『隙間』の凄さ キャラクターに命を吹き込む「間」の描き方

独特な「間」が、キャラクターたちに命を与える
最後に、少しだけ漫画の技法的な話をしたいと思う。これは前作を読んでも思ったことだが、高妍が描く漫画は、とにかく「間」の取り方が絶妙だ。
むろん、彼女が描く漫画も、基本的には他の多くの日本のストーリー漫画と同じで、いわゆる映画的手法(モンタージュ)を用いたカット割りをしているのだが、1つのカットに費やすコマの数が、彼女の漫画の場合、通常よりも1つか2つ多いのだ(具体的にいえば、キャラクターの表情の変化を、2コマ以上使って、同じ構図で見せるようなカットが異様に多い)。
この描き方は、スピード感を削ぐ、というデメリットがなくはないのだが、丁寧にキャラクターの心情を描きたい場合には、極めて有効だといえよう。
いずれにせよ、この独特な「間」をつくり出すカット割りと、細(こま)かく柔らかな線の連なりが、高妍が描くキャラクターたちに命を与える。だから彼女が描く物語はリアルなのだと私は思う。
























