『宝石の国』『二匹目の金魚』『緑の歌』……部屋におきたい、装丁にこだわりを感じる漫画たち

 電子書籍や縦読みのウェブトゥーンが日に日に身近になっていくなかでも、紙の漫画本の人気は根強いものがある。ページをめくる際の感触や、インクの印刷された紙特有の匂いなど、本の質感を楽しむことも含めた”読書をする“という体験の魅力とともに、部屋に置いておきたくなる「装丁」も時として、購入を決める大きなポイントになるだろう。そこで本稿では、装丁にこだわりを感じる漫画作品の一部を紹介したい。

『宝石の国』

 『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載され、2017年にはアニメ化を果たした『宝石の国』。休載期間を経て2022年6月24日発売の8月号から連載を再開し、その記念として期間限定で全エピソードが無料公開されたことでも話題となった。

 宝石の身体をもったキャラクターが登場する本作において、アニメでは3DCGによって光沢のある質感が表現された。キャラクターが動くなかで光がさまざまな方向へ反射し、その様子は非常にきらびやかなものであった。

 そんな本作の単行本はカバーの表紙にホログラム加工がされており、アニメにも負けないほど宝石のような輝きを見せるものとなっている。また第11巻では上製箱入りの特装版も発売されており、作品の世界を図説で網羅した資料の精密さもさることながら、通常版とはホログラムの加工が異なるものとなっている。

 7・9巻の特装版では装丁や紙のセレクト、ページ構成から本文デザインを作者・市川春子氏が担当していることも含め、本作は単行本の装丁に対するこだわりをつよく感じる作品だ。

『二匹目の金魚』

 表紙カバーが放つ輝きに目を奪われる『宝石の国』もさることながら、カバーの下に隠れた本体の表紙からこだわりを感じる作品も多い。そのなかでも『二匹目の金魚』は本体の装丁から話題を呼んだ作品だ。

 本作は作者・panpanya氏の作品を集めた短編集であり、表題作『二匹目の金魚』は水槽の掃除をする女の子が清掃中に脱走してしまった金魚を捜索し、少し不思議な街を巡る様子が描かれたエピソードである。

 レトロな広告風のイラストなどが印刷されたカバーを外し、明らかとなるのは昭和時代に多く見られた模様のある型板ガラスのイラストを印刷した表紙。ガラス全体はザラザラとした触り心地になっており、模様部分のみツルツルとした質感となっている。

 本作はじめpanpanya氏の単行本は作者本人が装丁を担当している。『グヤバノ・ホリデー』の本体はレンガのような模様が印刷されており、紙やすりのような質感となっている。『枕魚』の本体はタイル状の模様となっており、まるで浴室の壁に貼られたタイルのような触り心地だ。

 2022年9月には新刊『模型の町』が発売予定である。収録されるエピソードと共に、本作はどんな装丁になるのか、非常に楽しみである。

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