藤田和日郎×劇団四季のミュージカル『ゴースト&レディ』劇評 虚構だからこそ語れる“真実”とは

劇団四季『ゴースト&レディ』劇評
劇団四季ミュージカル『ゴースト&レディ』より【撮影者:上原タカシ】
劇団四季ミュージカル『ゴースト&レディ』より【撮影者:上原タカシ】

観る者の胸に響くフローのメッセージ

 さて、あらためていうまでもなく、世界各地で戦争が勃発しているいま、海外と日本のクリエイターが集まって作り上げた本作が上演される意味は、ことのほか大きいだろう。

 原作の終盤――敵対するジョン・ホール軍医長官に向かって、フローがこう叫ぶ場面がある。「たとえそれが『偽善』でも 貫き通さねばならない『偽善』がある」

 このセリフは、ほぼ同じ形でミュージカルの脚本にも採り入れられているのだが、何よりも恐ろしいのは、「戦争」という非日常の中で、人々の心が麻痺していくことかもしれない。ならば彼女がいうように、「偽善」といわれてもかまわないから、心が麻痺する前に、自らが正しいと思うことを各自が行うべきではないだろうか。その小さな善の集積が世界を変えることもあるだろうし、遠い日本にいても何かできることはあるはずだ。

 そう、虚構(フィクション)だからこそ語れる真実というものは、間違いなくある。本作で描かれているフローとグレイの熱い生きざまは、きっとあなたを変えてくれるきっかけの1つになるだろう。

■劇団四季『ゴースト&レディ』
https://www.shiki.jp/applause/ghostandlady/

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