スタジオジブリ「看過できない」 本に掲載された絵を額装してフリマサイトに出品する“切り抜き販売”とは
ジブリが警告する“切り抜き販売”とは
『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』などの名作アニメで知られるスタジオジブリは12月9日、自社のアニメ関連の書籍から切り取った絵を額装するなどし、オンラインショップなどで販売されている例があるとして注意を喚起した。こうした品物が「著しく高額な値段」で販売されている例を確認したとし、「当社の著作権その他知的財産権を侵害し得るもの」と警告している。
また、スタジオジブリはこうした事態を「看過できない」と断じ、「当社としては当該行為に一切関与しておらず、民事及び刑事の両面での厳正な対処を講じる方針であることを、ここにお伝えします」と発表した。こうした“切り抜き販売”については以前から問題視する声はあったが、スタジオジブリが声明を出したことで注目を浴びている。
そもそも、こうした品物はどのように製作されるのだろうか。その手口はこうだ。画集を購入する。絵が入ったページを、切り取る。そして額に入れ、フリマサイトに出品する、というもの。ただそれだけの品物だ。しかも額は決して高価なものではなく、ディスカウントショップなどで販売されているチープなものだ。画集は新刊で買っても5000円程度、ブックオフで買えばもっと安く買える。
画集のページを切り取り、格安の額に入れて数千円で売るのだから、まさに錬金術と言っていい。そんなものを欲しがる人がいるのかと思うのだが、実際にフリマサイトを見ると結構売れている。以前から目に付いたのは江口寿史氏の絵で、明らかに画集から切り抜かれたものが販売されていた。鳥山明の『ドラゴンボール』なども、画集から切り取った絵が額装されているのを見かけた。
切り抜きの販売は昔から行われている
これらの絵は「無断でコピーしたもの」ではない。繰り返すようだが、既存の書籍を切り抜いて、額装しただけのものである。古書店では「週刊少年ジャンプ」や「週刊文春」などの雑誌の表紙が、ラミネート加工して販売されているものを見かける。ましてや、書籍や雑誌の切り抜きは、以前からオークションサイトやフリマサイト、そして古書店でも以前から販売されているジャンルなのである。
人気俳優やアイドルのインタビューやグラビアが雑誌に掲載されている場合、そのページだけほしいという需要は存在する。そうした推し活目的の需要だけでなく、例えば作家や文豪のインタビューには学術的かつ史料的な価値もあるため、研究者からの需要も存在する。そのため、雑誌の切り抜き、場合によっては写真集の切り抜きが流通してきた経緯があるのだ。
問題となっている品物は、切り抜きを額に入れただけの代物に過ぎない。著作権上の線引きが難しい事例といえそうなのはそのためで、どう区別をつけるのか、難しい判断となりそうだ。結局のところ、消費者がこうした商品を買わないようにするしか防衛策はない気がする。スタジオジブリが今後どのような対策を取るのか、そもそもこうした行為が違法に当たるかどうか、法的にどのような判断が下されるのか。今後の動向を注視していきたい。