その才能に驚倒ーー坂崎かおる、待望の短篇集『嘘つき姫』から広がる新たな物語世界への確信

坂崎かおる、待望の短篇集『嘘つき姫』

 一方、「私のつまと、私のはは」「あーちゃんはかあいそうでかあいい」「電信柱より」「嘘つき娘」などで、女性同士の恋愛や関係性が扱われている点も見逃せない(「ニューヨークの魔女」も入れていいかもしれない)。この中では、ARを使った赤ん坊ロボットの存在により、女性カップルの認識の齟齬が露わになる「わたしのつまと、私のはは」と、戦時下のフランスと戦後の某所を舞台に、互いに嘘を抱えながら姉妹のように暮らした二人の女性の人生を捉えた「嘘つき姫」が、特にいい。「私のつまと、私のはは」のラストの意外性は衝撃的。「嘘つき姫」は長篇になるだけの内容を凝縮し、見事な短篇に仕立てている。

 また、「あーちゃんはかあいそうでかあいい」の〝歯〟や、「日出子の爪」の〝爪〟などに、フェティッシュな要素があることも留意すべきである。これも作者の持ち味なのだろう。詳しく触れられなかったが、「リトル・アーカイブス」「リモート」も、インパクトのある話だ。収録された九篇を知れば、本書の先に広がるであろう新たな物語世界が、素晴らしいものになることが確信できる。だからこれからも坂崎作品を、追いかけていきたいのだ。

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