ちいかわ、中国でも大人気 背景にあるのは経済停滞と社会不安による“癒し”の欲求?
中国人も『ちいかわ』ブームに意外性を感じている
『ちいかわ』の中国人気は、こうしたキャラクターがもつ“普遍的”な魅力、国境や文化を超越する「かわいい」を感じていることがあるだろう。
一方で謝辰氏は、『ちいかわ』の中国語訳「吉伊卡哇」で中国のSNSを検索すると「吉伊卡哇为什么这么火(ちいかわはなぜこんなに人気?)」といった分析系の投稿が多く見られ、「おそらく中国人も多少この人気ぶりに意外性を感じているのではないかと思います」とも指摘してくれた。
では、そうした投稿でどのような分析がなされているかというと、多くは「作品自体の面白さ・独特さが最大の魅力のポイントで、それがバズる理由と考えられている」とのこと。
謝辰氏はさらに「あくまで私見ですが」とし、現在の中国の若者をめぐる状況も関係があるのではと話す。「中国の大企業はこの2〜3年リストラが多く、大都市でも30代で失業者になる若者が増えていると、一時期話題になりました。そうした若者たちの中にはライブコマ-サー、自営業、配達業者などに転身する人も多いようです。
それに日本や韓国で加熱している受験競争は中国ではすでにピークが過ぎ、少子高齢化が新しい課題になっています。こうした状況は日本人がこれまでに経験してきたことが中国でも起こりつつあるということかもしれません」
『ちいかわ』の世界観が実は意外とブラックでシビアなテイストを孕んでいるというのは、よく指摘されるポイントだ。か弱いキャラクターたちは理不尽な目に遭ったり、切ない体験をしたりすることも多く、その姿は確かに現実の閉塞感を反映している部分もある。
とはいえ、中国固有の状況が現在の『ちいかわ』人気に直接結びついていると考えるのは早計に過ぎるのかもしれない。可笑しくも悲しく、憐れさや儚さを感じさせるキャラクターたちにどこかで共感しながら、魅力的なデザインと世界観が醸し出す“かわいさ”に癒やされる。そんな感覚はおそらく日本人にも中国人にも(そして『ちいかわ』に魅せられている世界各国の人にも)共通なのではないだろうか。
シンプルだからこそストレートに刺さる“かわいい”の癒やしーーそれが今、日本人だけではなく中国の人々にも、そして広く世界にも必要とされているのかもしれない。