虹のコンキスタドール・岡田彩夢 × るぅ1mm『友人の式日』対談 「大好きな友達の力になれるのは嬉しい」
岡田「この世の関係性の中で、友達が一番好き」
――収録されている4作品は、自分の恋心に気づいたり、友情から恋愛感情に変わったりする瞬間を描いている点が共通していますよね。長い間同じテーマの作品を制作されてるということは、るぅさんの創作において、恋が大きなテーマなのかなと思いました。
るぅ:意識して描いたわけじゃないんですけど、読み返してみたら「全部同じこと書いてある!気持ち悪い!」って思いました(笑)。私は、「なんでだろう」って疑問に思うことが一つあったとしたら、「私はなんでこれが気になってるんだろう」ってさらに深めていって、「これが気になってたのかな?」って気づけたら、またそれを確認したりするんですよね。『怪獣くん』は最初からテーマを決めていましたが、今回は好き勝手に描かせていただいたので、完成したものを後から見て自分もこのテーマに気づきました。だから短編集として束ねることってすごく意味があるんだなと思います。
――友達もテーマの一つにあると思うんですが、お二人にとって友達とはどんな存在ですか?
岡田:私はこの世の関係性の中で、友達が一番好きです。家族もメンバーももちろん大事ですけど、世の中のみんなが大事にする恋愛とかは、私は友情に比べるとあまり魅力的に思えなくて。友達と話して刺激を受けたり、勉強になることを聞いて収穫を感じたり、それを創作に生かして……みたいな循環がすごく有意義だと思うし、成長している実感も持てます。たまに「彩夢ちゃんに言われたからこれ作ってみた」とか「メンタル持ち直した」とか言ってもらえると、本当に良かったなって。自分も力をもらっているし、大好きな友達の力にもなれてるっていうのは嬉しいですね。多分今が一番友達多いんですけど、今が一番人生楽しいです。
――るぅさんはいかがですか?
るぅ:友達かぁ……。私は友達ってどの関係性よりも曖昧なものだなと思ってるんです。友達ってたくさん種類があるじゃないですか。お仕事仲間とか、趣味の友達とか、一緒に遊びに行きたい人とか、旅行したい人とか、親友とか。本当はすごく細分化されているものだと思うんですけど、それを “友達”ってひとまとめにされている気がするから、どれを指して、何を言えばいいのか、正直わからなくて。
でも、そうだな。人は鏡っていう言葉があるじゃないですか。人からじゃないと見えない自分もいるし、私からしか見えない人の部分もあると思うから、そういうのを共有できたときにすごく面白いって思います。私は人間関係って自分を知るためにあると思っているんです。誰かと話すと自分のことがさらにわかるし、友達のこともわかる。そうすると嬉しくなるじゃないですか。だから知りたいんですよね。自分のことも人のことも、まだ全然知らないから、どんなことを考えてる人なのか知りたい。それで「この人はこういう人なのかも」って像が見えてきたときはすごく感動します。だからそういう友達関係が作れたらいいなって思うかもしれないです。
岡田:今の話、すごくるぅさんらしくて好きです。るぅさんの中の愛と好きって、すごく近くてすごく幅が広いんですよね。大きなカテゴライズの中に愛があって、その中の一つ一つの細々したものを作品に起こしている方だと私は思っているので、「友達ってどれを指して言えばいいかわからない」って言うのも納得だなと。
――芯が通ってる方だなと感じます。
岡田:私は本当にるぅさんの作るもの全てが大好きですし、TRPGとかで実際に関わるようになってからは、より人柄も好きになりました。電話で創作論とかの深い話をしたときもすごく丁寧に答えてくださって。いつ球を投げても、「はい!」って笑顔で返してくれるみたいなところがあるんですよね。
るぅ:それは投げ方が上手なんですよ(笑)。
るぅ1mm「原作のある作品を漫画化したい」
――るぅさんは岡田さんの好きなところや尊敬するところはありますか?
るぅ:私は仕事がすごく好きだから、アイドルという身体を全部使って表現する仕事をされていることや、仕事への取り組み方も尊敬していますし、イラストとか文章とか、色々なことを好きでやってる部分も尊敬しています。私も色々なことに挑戦してるんですけど、作ることの域は超えないので。あとは大学院まで行って勉強したいことがちゃんとあることとか、言葉や人生に関する考え方もすごく好きですね。この間、電話で「分人主義」の話をしたんですよね。
岡田:小説家の平野啓一郎さんの「分人主義」っていう考え方の話ですね。自分の中に色々な比率があって、たとえば、るぅさんに対する自分、別の友達に対する自分、親に対する自分ってたくさんの分人がいる中で、「この人といるときの自分が好き」って感じる分人の割合を増やすと生きやすくなるっていう考え方です。
るぅ:素敵じゃないですか? すごく興味深くて面白いなと思いました。
――そういった思想について語りあえる、お二人の関係性も素敵だと思います。
岡田:貴重ですよね、こういう話に興味ない人も多いと思うので。るぅさんとは別にすごく長い時間お喋りしてるわけじゃなくて、たまに数時間お喋りする程度なんですけど、急にそういう話になったのは、もしかしたらお互いに見えてる世界や考えていることが近いのかなと思います。
るぅ:確かにそうですね。
――今後、何か二人で一緒にやってみたいことはありますか?
るぅ:あ、あります! 私、実は原作のある作品を漫画化したい気持ちがあって。岡田さん、小説とか最近書いてますよね?
岡田:え! あ、最近小説を書く練習をしてるんです。子どものころの最初の夢が小説家だったんですけど、しばらく筆を折っていたんですよ。でも周りに押されて去年あたりからまた書き始めて、エッセイを書いて文芸誌に載せていただいたり、気づいたらTRPGのシナリオまで書いてたりして(笑)。だから今年も小説書く練習いっぱいしようと思ってたんですけど……え、それって私の物語を漫画家してくれるってことですか? いいんですか? やりたいです!
るぅ:共作やりましょうよ! 岡田さんに書いていただいた小説を私が漫画化する形でもいいですし、プロットをいただいく形でも大丈夫ですし。
岡田:あ、でも私としては、るぅさんと一緒にお話を考えたい気持ちもありますね。登場人物はこういう感じで、関係性はこうで……とか、二人で話し合って作るの、めっちゃ楽しそうじゃないですか?
るぅ:すごい楽しそう! 人が話を作るところに携わったことがあまりないので、すごく気になるし、興味あります。
岡田:あ、これはもう絶対にやりましょう。今から話を進めちゃいます(笑)。どんなジャンルがいいかな。学園ものとかはたくさん見てるから、SF系みたいな感じで宇宙が舞台のお話とか良いかもしれないです。ちょっと不思議な世界観の中で、人間の心の温かみみたいなものを描くるぅさんの作品が見てみたいですね。
るぅ:そういうテイストは自分だとあまり思いつかないので、ぜひこの機会に描いてみたいです。ぜひやりましょう!
■作品情報
『友人の式日 るぅ1mm作品集』
著者:るぅ1mm
価格:770円
発売日:2024年3月21日
出版社:双葉社