『Dr.スランプ』のような漫画はほかになかったーー日本の漫画を世界へ向かわせた作風

鳥山明、世界へ漫画文化を広げた功績

 『DRAGON BALL』も、当初は愛らしかったりかっこよかったりするキャラクターたちが織りなすドタバタ劇で読ませるところがあった。途中からバトルものとなり、強さがエスカレートしていく展開となって次は誰と戦うのか、その次はどれだけの強さを持った敵がでてくるのかといった興味で、読者を引きつけ人気を獲得していった。

 そのフォーマットは『北斗の拳』や『幽☆遊☆白書』といった「週刊少年ジャンプ」の代表作に引き継がれ、653万部という少年週刊誌の歴史で空前の数字を生み出すことになる。その意味で鳥山明と『DRAGON BALL』は、日本の漫画を最盛期へと向かわせる道を開いたと言える。

 そしてその道は、『ONE PIECE』であり『NARUTO-ナルト-』であり『BLEACH』であり『鬼滅の刃』であり『僕のヒーローアカデミア』『呪術廻戦』といった作品に引き継がれ、全世界的な日本発の漫画人気を呼んでいる。1980年の鳥山明の登場だけがそうした成功を呼んだ訳では決してなく、他の作品の様々な試みがあり、アニメという映像メディアの世界進出もあってこその世界的な人気だが、それでも『Dr,スランプ』が開いた道は確実に繋がっている。そしてその先にもつながっていくはずだった。

 東京・池袋で3月8日から11日まで開催の東京アニメアワードフェスティバル2024で鳥山明は、アニメ功労部門を贈られた(メイン写真は、TAAF2024で展示中の鳥山明のアニメ功労部門贈賞に関する展示)。『装甲騎兵ボトムズ』の高橋良輔監督や、アニメ『ドラゴンボール』でピッコロを演じている古川登志夫らも選ばれた中にあって、漫画としての贈賞はアニメ界に対する多大な貢献を評価されてのものだった。アニメ『ドラゴンボール』は全世界で見られていて、アニメのイベントが開かれれば孫悟空のコスプレをした人がかならず何人か現れる。

 このアニメ部門功労賞の贈賞に対してコメントを寄せた鳥山明は、秋から展開される予定の『ドラゴンボールDAIMA』についてこう言っている。

「本来、僕抜きでアニメオリジナルシリーズを作る予定だったようですが、所々でアドバイスをするうちに、いつのまにかガッツリ入り込むことに。全体のストーリーだけでなく、世界観、キャラデザインやメカなどもいろいろ描いています。激しいアクションだけじゃなく盛りだくさんな内容になっていると思いますので、楽しんで観ていただければ幸いです」

 最初の『Dr.スランプ』の頃はあまりアニメに興味がなかったという鳥山明が、今ではすっかりハマって自らの才能をそこに注ぐようになっていた。漫画作品として新作をあまり読めない状況にあって、鳥山明はアニメに新しい発想を注ぎ込んでいた。コメントの末尾には「若い頃の生活のせいか、健康にいまいち自信のない僕があとどれだけできるかわかりませんが、より面白い作品作りを頑張って目指していきますので、これからもどうぞよろしくお願いします!」と寄せて、今後の活動を約束していた。突然の訃報は、そうしたクリエイティブの成果にもう触れられないことを意味する。かえすがえす残念でならない。

 今は鳥山明が力を振り絞って才知を注いでくれた『ドラゴンボールDAIMA』の登場を待ちたい。

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