友近「面白いと思うもの、許せないと思うものは昔から変わらない」 本人に聞く“変わらない魅力”の源泉

友近に聞く、変わらない魅力の源泉

 旅館の仲居、スナックのママ、ベテラン演歌歌手、そしてちょっとクセのあるおじさんまで。様々なキャラクターを演じわけ、お茶の間に笑いを届けてきた芸人・友近が、初のエッセイ『ちょっとここらで忘れないうちに』(徳間書店)を発表した。

 子どものころから面白いことが大好きだった友近が綴る言葉は、くすっと笑えるくだらないことから、「なるほどな」と頷きたくなるちょっと真面目な話まで実にバラエティ豊か。

 「本を出すのは一大事」と身構えてしまったところから始まった執筆作業。しかし、書いているうちに自分自身を発見するところも。そこで初のエッセイをきっかけに見えてきた、自分の軸を大切に生きる勇気について聞いた。(佐藤結衣)

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本を読まない人も「くだらないね〜」と楽しめる本に

――とても読みやすくて、まるで友近さんからLINEを受け取っているかのような気分で、読み進めることができました。

友近:ありがとうございます。そのくらいの感覚で読んでもらえたらうれしいですね。この本は、ふだん本を読まない人も読めるような気軽なものにしたかったので。

――友近さんは普段、本を読む習慣は?

友近:それがないんですよ。移動、移動、移動……の生活ですから。もう家に帰ったら寝るだけ。本を開く余裕というのがなかなかなくて。なので、この本も移動中に思いついたことをケータイでバーッと書いて編集の方に送る感じでした。

――ケータイで書かれたんですか。

友近:そういうやり方をしたのは今回が初めてですね。今まで書く関連のお仕事は、全部原稿用紙に鉛筆でした。でも、原稿用紙やと消しゴムで消さなアカンでしょ。本にする量じゃ、終わらないなと(笑)。

――初のエッセイということで、試行錯誤したところはありましたか?

友近:書いているうちに「あ、そうか」なんて気づくこともあって。つい長くなってしまうところもありましたね。で、書きながら「こんなに長くて読めるかな」と心配したんですけど、編集の方から「いえ、全然長くないですよ」なんて言われたり。

――その長さのランダムな感じも面白かったです。バラの棘を鼻に載せた写真など、画像にもくすりとさせられました(笑)。

友近:うれしいです。私が小さいころから思っていたくだらないこととか、しょうもないことを面白がってもらえたらいいなという感じでまとめていったので(笑)。でも、やっぱり自分だけが読むネタ帳みたいなものとは違って、読む人が不快にならないほうが良いなとか、考えちゃうところはありました。

バッファロー吾郎との出会いで確立された、ブレない強さ

――読み手が不快にならないように、の判断基準は難しいところですよね。

友近:そうですね。今回のエッセイに限らず、いつも文章に残るものはチェックを念入りにするようにしています。「この人が読んだらどう思うかな?」「こっちの人が読んだらどうかな?」と、何度もいろんな人の立場になってみて。

――そうして削ったり調整したりすることも?

友近:ありましたね。でも、「ここは批判があったとしても、自分が思ったことやから入れたままで行こう」というラインはブレないんですけどね。

――その軸と呼べる部分が、改めて友近さんの魅力だなと。

友近:そこは自分でも強みだなとは思います。たぶんその強さが持てたのは、最初にバッファロー吾郎さんとの出会いがあったからなんですよね。テレビで見て「おもろいなこの人たち」って思っていた人に、「おもしろいファンです」って言われたのは大きな自信として残っています。そう言ってもらえた瞬間のこともずっと覚えていますしね。

――「理解者は必ずいる」の章にも繋がってくるお話ですね。

友近:そうですね。やっぱり自分が良いと思うものを、同じように感じてくれる価値観の合う人がいるんだっていうのをデビューしてすぐに感じることができたので、ここまでブレずに来れたのかなと。たとえ伝わらないときがあったとしても、きっとこれを面白がってくれる人はいるんだって思えるので。

――今は様々な声が届きやすくなっている分、そのあたりがブレやすい時代にもなっているような気もします。

友近:やっぱり「嫌われたくない」「みんなに好かれたい」って思うことは仕方ないことやし、それは当たり前のことっていうか。もちろん、そうできたら1番なんですけど、それを目指しすぎるとちょっとした批判でもグッと落ち込んでしまいますからね。「理解者は必ずいる」という気持ちがないとしんどくなると思います。

――では、落ち込むことはあまりないですか?

友近:いやいや、しんどいことはいっぱいありますよ。やっぱりいろんな意見を持っている人がいるので。今回のエッセイだって「果たしてこれは本として成立してんのか」なんて考えたりもします。そういう意味では不安もありますね。

――そういうときは、どのようにされているのでしょうか?

友近:これは自分の単なるわがままか正義かを毎回自問自答していますね。それこそ理解者と呼べるような、同じように感じている人と話したりもしますけど。

――なかには、もっと自分本位で良かったかなということも?

友近:ありますあります。「あー、今のはちょっと守りに入ったな」とかね。そうして毎日毎日戦ってきた感じです。

好きなものも変わってないし、嫌いなものも変わってない

――本の中にある「どこと向き合ってるん」の章では、現場のスタッフや共演者が視聴者とは違うところに気を使っていることへの疑問が綴られていましたね。友近さんの仕事観に触れられたような気がして、個人的にすごく好きな章です。

友近:ありがとうございます。

――「ロケでは盛り上がっていたのに、あの部分を使わないんだ」みたいなのも、よくあるんですね。

友近:いっぱいありますよ。こっちもくだらないこと言っているのでカットされるのは仕方ない(笑)。ただ、最近MCを笑かす番組作りになっているのは気になりますね。あくまで視聴者と向き合ってほしいなと……。番組作りのバランスは難しいですね。

 人生って本当にこうバランスを保っているというか。前はアカンかったから、今回は良かったのかなとかね。その時々で返ってくるものは違っても、好きなものも嫌いなものも変わってないから。やっぱり面白いと思うもの、これは許せないって思うものは、昔からブレない。もしかしたらちょっとずつ変わっているところはあるかもですけど、「これが自分なんや」って受け入れられている気がします。

――見ているこちらとしては、そんな変わらない友近さんに安心するところもあります。

友近:昔、一緒に仕事した人がよう言うてくれてます。「変わってないよね」って。自分でも不思議なくらい(笑)。

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