第170回直木賞「近年稀に見る充実ぶりだった」ーー杉江松恋に聞く、受賞作のポイント

杉江松恋に聞く、直木賞受賞作のポイント

「直木賞は作品の完成度が高ければ獲れるとは限らないもので、運も左右すれば、時代性も鑑みられます。今回の直木賞候補となった作品は、どれもその作家にとっての到達点といえるもので、ぜひ読んでほしいものばかりです。

  たとえば大きな注目を集めた加藤シゲアキさんの『なれのはて』は、主人公がある人物について調べていくことで、時代の変遷を浮き上がらせる年代記的な作品となっています。次々と語り手を交代しながら群像を描き出していく手法も含めて、これまで様々な作家が挑戦してきた形式の小説ですが、加藤シゲアキさんならではの研ぎ澄まされた感覚で書かれていて、非常に完成度が高い。ミステリーを始めとした娯楽小説のテクニックを巧みに組み合わせた一作と言えます。今回の直木賞は、近年稀に見るほどハイレベルな賞レースで、よくぞこれらの作品を選んでくれたものだと感心したほどでした」

 直木賞受賞作はもちろん、候補作もすべて片っ端から読み倒したいところだ。

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