『学研の図鑑LIVEエクストリーム ティラノサウルス』編集長が出演した有隣堂のライブ配信で4000部完売の理由

ライブ配信で学研の図鑑が4000部完売の理由

 出版プロモーションの景色が大きく変わりつつある。SNSやYouTubeによる書店発信が当たり前となり、従来の新聞広告や店頭拡材とは違う“瞬間的な沸点”が起きることが増えてきた。学研の人気図鑑シリーズ『学研の図鑑LIVEエクストリーム ティラノサウルス』が、有隣堂のライブ配信出演をきっかけに 4000部を即完したというニュースは、その最も象徴的な例だろう。

 なぜ、恐竜図鑑がライブ配信でここまで売れたのか。そこには、子ども向け図鑑の新たな需要構造、書店のメディア化、そして“編集者が前面に出る時代”という三つの潮流が重なっている。

■ライブ配信が“体験する図鑑”の入り口に

 有隣堂はここ数年、店内からのYouTube生配信や、スタッフ・書店員を主役にしたSNSコンテンツを継続的に展開している。今回の学研図鑑のライブ配信でも、編集長が自ら登場し、制作裏話、恐竜の最新研究、図版へのこだわりなどをリアルタイムで語った。

 とくに今回の『ティラノサウルス』は、単なる「恐竜の種類紹介」ではなく、復元の変遷、最新の古生物学の視点、専門CGチームによる視覚表現、“動いて見える”図版の迫力
など“知識をアップデートする図鑑”として編集されている。この魅力が、編集者の口から情熱とともに語られることで、視聴者は「ただの図鑑ではない」という特別感を強く受け取る。言い換えれば、ライブ配信が図鑑の“立ち読み+講義+制作秘話”を一体化した体験の場になったのだ。

■図鑑は“親が買う本”から“家族で楽しむ娯楽”へ

 図鑑は長らく、“学習のために親が選ぶ本”という認識が強かった。しかしジャンルの多様化され、図鑑のデザインや作り手への関心など、“大人も欲しくなる図鑑”という存在に変化している。有隣堂の視聴者には子育て世代に加え、恐竜ファンや科学コンテンツ好きの大人も多い。「図鑑=子どものもの」という固定概念が崩れたことで、視聴者層全体が購入対象になった。 この市場の広さが、ライブ配信の爆発力と直結したと言える。

 SNS時代には編集者自身が“企画の語り手”として注目される事例が増えている。今回の学研図鑑LIVEエクストリームの編集長もその一人だ。制作意図など裏側をわかりやすく語ることで、視聴者は“図鑑の向こう側にいる人の熱量”を受け取る。そして今の読者は、本そのものよりも**「その本を作った人の情熱」**に強く心を動かされる。これは書店・出版社のSNS発信を成功させてきた新しい文脈であり、今回の完売劇にもはっきり作用している。

 ライブ配信は読者が本の価値を深く理解し、その本を買うかどうかを“体験的に判断できる場”になっている。出版社・書店が連携して行うライブは、すでにただの宣伝ではなく、“新しい購買行動の設計”そのものなのだ。とりわけ重要なのは、書店がメディアとして力を持つようになったことである。SNS上で本が売れる時代。その最前線に、図鑑が立っているのは象徴的だ。

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