2023年「週刊少年ジャンプ」連載陣はどう入れ替わった? “学園モノ”新連載が強さを見せた1年に

 2023年の『週刊少年ジャンプ』では、多数の連載作品が入れ替わっていった。フレッシュな新連載が始まる一方、惜しまれながら物語の途中で幕を閉じることになった作品も多く、読者アンケート至上主義の過酷さをあらためて見せつけられた印象だ。

  今回は、そんな同誌における連載陣の入れ替わりについて具体的に振り返り、ここ1年でどんな変化があったのか総括してみたい。

  まず、2023年に始まった新連載をまとめると、その数は計11作品。大きく分けて4回の新連載攻勢があり、まず4月から5月にかけて原作・附田祐斗、作画・佐伯俊の『食戟のソーマ』コンビによる『テンマクキネマ』、『黒子のバスケ』の藤巻忠俊が手掛ける『キルアオ』、雲母坂盾の『ドリトライ』、川江康太の『鵺の陰陽師』が始動した。

  そして6月には『火ノ丸相撲』の川田による『アスミカケル』、蜂矢育生の『アイスヘッドギル』、9月には林快彦の『魔々勇々』、外薗健の『カグラバチ』、逸茂エルクの『ツーオンアイス』と続き、最後は寺坂研人の『グリーングリーングリーンズ』と雨宮ケントの『累々戦記』が連載開始となった。

  しかしこれらの作品のうち、『テンマクキネマ』と『ドリトライ』、『アイスヘッドギル』の3つはすでに連載が終了している。また、昨年から連載が始まった作品も、多くが今年に入ってから完結を迎えており、仲間只一の『大東京鬼嫁伝』、渡辺シンペイの『ギンカとリューナ』、林聖二の『イチゴーキ!操縦中』、江ノ島だいすけの『人造人間100』、『タコピーの原罪』の作者・タイザン5による『一ノ瀬家の大罪』が連載終了となった。

  これによって、2022年の新連載で生き残ったのは、原作・末永裕樹、作画・馬上鷹将の『あかね噺』、原作・西尾維新、作画・岩崎優次の『暗号学園のいろは』、眞藤雅興の『ルリドラゴン』の3本だけという形となる。ただし『ルリドラゴン』は作者の体調不良により、昨年8月から長期休載に入っているため、今年は一度も掲載されていない。

  こうしてまとめてみると、『週刊少年ジャンプ』で1年以上連載を続けることの難しさをあらためて感じられる。ベテラン作家でも、名の知れたヒットメーカーでも、作品自体の勢いによって容赦なく連載の可否を判断されている印象だ。逆に言えば、現在生き残っている作品は、たしかな人気があると言えるのではないだろうか。

  とくに現在、新連載陣のなかで勢いがあるように見えるのが『キルアオ』と『鵺の陰陽師』の2つ。『週刊少年ジャンプ』紙上の掲載順が高めの位置で安定しており、カラーページを担当する頻度も多い。

学園モノの人気は今も不動?

 『キルアオ』は伝説の殺し屋・大狼十三が謎の生物兵器に刺され、中学生の身体になってしまい、慣れない学生生活を送っていくという内容。他方で『鵺の陰陽師』は、「幻妖」という生き物が見える少年・夜島学郎が、謎の女「鵺」に出会ったことから始まる現代陰陽師譚だ。いずれも“学園モノ”という共通点があり、主に学校を中心としたストーリーが展開されている。

  当たり前の話ではあるが、少年マンガにおいて読者の共感を得やすい学園モノは王道中の王道と言えるジャンル。今でもその人気は安定しているということなのかもしれない。

  やや変わり種ではあるものの、昨年11月から1年以上連載が続いている『暗号学園のいろは』も、学園モノのスタイルをとっている。“暗号”というマニアックな題材を扱いながらも、生き残ることに成功しているのは、学校を舞台にすることで読者の興味と共感を上手く引き出した結果とも考えられそうだ。

  さらに2021年4月から連載されている三浦糀の『アオのハコ』も、学園モノの青春ストーリーだ。同作に関してはTVアニメも発表されており、今後さらに人気が高まることが予想される。

 なお新連載以外に目を向けてみると、2023年には長期連載作品にもさまざまな変化が起きていた。TVアニメ化でも話題を呼んだ甲本一の『マッシュル-MASHLE-』は、7月3日発売の『週刊少年ジャンプ』31号で完結。同作の連載期間はおよそ3年半に及び、最後も大団円といった形で終了を迎えている。

  また、同じくTVアニメ化作品の田畠裕基『ブラッククローバー』は、本誌から『ジャンプGIGA』に移籍することが8月に発表された。作者によると、その理由は「週刊連載の漫画制作スケジュールが自分の執筆状況と合わなくなってきていました」とのことだ。

  最近では『呪術廻戦』や『僕のヒーローアカデミア』なども、クライマックスを匂わせる展開となっており、『ONE PIECE』も数年前から完結が近いと宣言されている。来年、再来年で、『週刊少年ジャンプ』ではさらに大きな連載陣の変化が訪れるかもしれない。

  この先どれだけ学園モノ以外の作品が台頭できるのか、新世代の活躍に期待していきたい。

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