『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』SNSトレンド「緑のおじさん」とは? 某キャラが急に大人気になったワケ
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※本稿には『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』ならびに関連作品のネタバレがあります。未鑑賞の方はご注意ください。
シリーズのファンならずとも大きな衝撃をもって迎えられた、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』。その登場人物の一人が「緑のおじさん」と呼ばれ、SNSで大人気となっている。
ぶっちゃけると、「緑のおじさん」とはシャリア・ブルのことである。このシャリア・ブル、「木製帰りでニュータイプの素養がある」という基本的な設定やロマンスグレーなルックスは各作品でだいたい共通しているものの、作品ごとにポジションが大きく異なるキャラクター。「一年戦争を語り直した二次創作」という側面もある『GQuuuuuuX』ではまさかの大抜擢を果たし、そのじっとりした情念や今までのシャリア・ブルとは異なるルックスから、現在大人気となっているのだ。
テレビ版のシャリア・ブルは、簡単に書くと「終盤のゲスト悪役」である。登場したのは第39話。ソロモンが攻略され、テキサスコロニーでシャアとセイラが再会したあと、いよいよア・バオア・クーへの連邦軍の総攻撃が始まろうとしていた時期にあたる。このころになるとララァがモビルアーマー・エルメスで実戦に参加しており、39話ではニュータイプとして覚醒しつつあったアムロとの精神的な邂逅も描かれている。シャリアはガンダムという作品が「ニュータイプとは」というテーマに肉薄しつつあった頃に登場したキャラクターなのだ。
シャリアは木星からジオンへヘリウムを大量に持ち帰った船団の隊長としていきなり登場。モコモコした白髪に口髭の人物として描かれ、どうみても結構な年齢であるように見える。そんなシャリアはギレンの意を汲んでニュータイプ部隊を編成していたキシリアの元へ送り込まれ、シャアと面会する。そして着任早々にニュータイプ専用モビルアーマーのブラウ・ブロで出撃。アムロの搭乗したガンダムら、ホワイトベースのMS部隊と戦闘を行なう。
戦闘ではブラウ・ブロの特徴であるオールレンジ攻撃を駆使し、ガンダムを翻弄。この攻撃を避けるための機動により、ガンダムは操縦系統を破損してしまう。さらにガンダムのシールドやカイの乗るガンキャノンの両脚を破壊するなど奮戦するが、ブラウ・ブロの真横に回り込んだガンダムによって至近距離からビームライフルを当てられ、シャリアは戦闘データ記録係のシムス・アル・バハロフ中尉とともに戦死する。
ニュータイプの素養を持ちながら、ギレンとキシリアというジオンのトップ層の暗闘に巻き込まれ、その間での立ち回りに悩みつつ撃墜されたシャリア。シャアは彼の立場と名誉を慮り、ララァによるガンダム追撃の提案をあえて却下している。ザビ家への復讐心を抱えたシャアにしてみれば、その暗闘の犠牲者であるシャリアには多少の同情もあったのかもしれない。1話だけ登場するゲスト悪役的なポジションでありながら、不器用かつ実直そうな人柄が印象的なキャラクター、それがアニメ版ガンダムのシャリアだ。
『GQuuuuuuX』が多くのネタを引用している小説版では、ポジションが大きく変化。ギレンからキシリアの元へ送り込まれるまではテレビ版と同じだが、シャアに心酔しその右腕的な存在になる。また安彦良和による『THE ORIGIN』ではグッと容姿が若くなり、プライドの高い人物として登場する。ララァをライバル視しつつも能力的にはララァより劣るとされ、最後には乗機ブラウ・ブロには不利な閉鎖空間でガンダムと対戦。アムロによって撃墜された。色々なシャリアの中でも、最もイヤミなシャリアだろう。
『GQuuuuuuX』のシャアとシャリアの関係は、小説版をベースにしたものだと思われる。ギレンの命令によりキシリアのニュータイプ部隊へ送り込まれることは他と同じだが、本作のシャリアはシャアの僚機のパイロットとなり、見た目はほぼそのままブラウ・ブロな「キケロガ」というモビルスーツに乗ってシャアをアシスト。数々の武勲を立てる。
しかし『GQuuuuuuX』中盤で発生したある事件により、シャアは行方不明となる。一年戦争がジオンの勝利で終わったあとも、シャリアは5年にわたってシャアと彼の乗った赤いガンダムを探し続け、宇宙世紀0085年にジオンが接収したペガサス級強襲揚陸艦「ソドン」でサイド6を訪れる。
現在のシャリアの大人気は、『GQuuuuuuX』でのシャアとの関係からだろう。今回のシャリアは、人たらしなシャアに半ばたらしこまれるように戦友となり、ともに一年戦争の修羅場を潜り抜けた仲である。「マヴ」として互いの背中を預け合ったのに、当のシャアは謎の現象によって失踪。それを5年経っても執念深く探し続けるという、このシャアに対する気持ちの強さ! 颯爽たるエースパイロットであるシャアに対するじっとりした執着と情念を感じさせるところが、ファンの心理に強く訴えたのではないだろうか。