漫画『ドラゴンボール』あっけない最終回「少年ジャンプ1995年25号」の“衝撃”を振り返る

 

『ドラゴンボールDAIMA』PVカット
『ドラゴンボールDAIMA』PVカット

■『ドラゴンボール』突然訪れた最終回

 筆者はこれまでに数多くの漫画の最終回をリアルタイムで見届けてきたが、もっとも衝撃的だったのは、小学生の頃に見た『ドラゴンボール』の最終回である。秋田県の田舎町に住んでいた筆者は、「週刊少年ジャンプ」を親に頼んで定期購読してもらっていた。とにかく『ドラゴンボール』の続きが1秒でも早く読みたくて、仕方なかったためである。

  発売日にはいつも母親が書店から「ジャンプ」を受け取り、持って帰ってきてくれるのが決まりだった。「ジャンプ」を手に取ったら、真っ先に『ドラゴンボール』を読むのが毎週のルーティーンである。筆者は、そんな日常が永遠に続くものだと思っていた。

  ところが、その日の「ジャンプ」――1995年25号に掲載された『ドラゴンボール』第519話は何かが違っていた。扉絵は巻頭カラーで孫悟空が描かれていた。おおっ、悟空、かっこいい! 鳥山明が描く扉絵には常に心躍らされたものだった。ところが、タイトルに目を移すと「バイバイ ドラゴンワールド」というものだった。

 え? “バイバイ”ってどういうこと? 気になりながらページをめくると、『ドラゴンボール』第1話にあった悟空とブルマの出会いの場面が描かれ、長い文章が並んでいる。一字一句読み進めていった筆者は、最後の一文字に絶句した。「…と いうわけで、最終回です」――つまり、『ドラゴンボール』の物語が終わりを迎えたのだ。2025年は、『ドラゴンボール』が最終回を迎えてから30年という節目の年なのである。

■最終回の告知がない衝撃

  近年の漫画は、『【推しの子】』でも『呪術廻戦』でも、あらかじめ「最終回まであと5話」のように“親切”に予告をしてくれるケースが珍しくない。そのため、読者は覚悟をしたうえで最終回に臨むことができる。しかし、当時の少年漫画にはそんな告知は何もなかった。筆者は『ドラゴンボール』は永遠に続くと思っていたし、同じ思いを抱いていた人は多いはずだ。

  しかし、最終回はあまりに唐突に訪れたのである。なにしろ、前話では悟空が参加する天下一武道会が始まったばかり。これから、悟空、ベジータ、そして魔人ブウの生まれ変わりであるウーブを巻き込んで激しい戦いが始まるのではないか。そう期待を抱いていたので、最終回を迎えるなど微塵も思わなかった。

  ただ、思えば予兆のようなものはあった。前話の最後のページに、「報告! 次回『ドラゴンボール』其之五百十九でなにかが起こる!!!!」「さあ!いったいなにが起こるというのか!?」「たいして期待せずに待て!!」という告知があったのだ。しかし、まさかその“なにか”が最終回とは思いもしなかった。

  映画化やイベントの開催など、何かポジティブな発表があるものと思っていたのに、なんと最終回だったのだから、ショックは計り知れないものだった。当時はネットもSNSも発達していなかったので、全国のファンの反応を知ることはできなかったが、おそらく相当数の子どもたちがショックを受けたと思う。

  翌日に学校に行くと、クラスの話題は『ドラゴンボール』の最終回で持ちきりだった。そして、筆者のその後の“ドラゴンボールロス”は凄まじいものだった。思えば、当時の男子小学生にとって「ジャンプ」と『ドラゴンボール』は教科書、経典のようなものだった。これほどのパワーを持っている漫画は、今後生まれるのだろうか。

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