三代目JSB・ØMIが明かす、人気絶頂の裏で抱えていた孤独と葛藤 「“美しい終わり”を大事にしている」

ØMI「“美しい終わり”を大事にしている」

お互いにリスペクトできる関係じゃないと上手くいかない

――では、そんな『LAST SCENE』に書かれているトピックをピックアップしながら、さらに深掘りしていこうと思います。まず、2020年頃に直面した鬱のお話から。グループ活動が発症の原因だったと書いてありましたが、限界を迎える前にも、自分の中で予兆のようなものは感じていたんでしょうか。

ØMI:予兆というか、『三代目 J Soul Brothers LIVE TOUR 2016-2017 “METROPOLIZ"』あたりから、メンバーと足並みが揃わなくなってきたのを感じていて。そこから何年もずっと張り詰めていたものが、コロナ禍に入ったタイミングでプツンって切れた感じでした。その瞬間に「ちょっと無理かも……」って思って、メンバーに対してもそうですし、この先の活動との向き合い方を考えることすら、難しいと感じるようになりました。あの時は明らかに様子がおかしかったので、メンバーも気づいていたと思いますし、僕も会社や周りのスタッフにも「限界が来てるかもしれないです」って相談しましたね。そしたら、いろんな人から謝られました。「ØMIは平気だと思っていた」って。

――“平気”というのは?

ØMI:周りからすると、僕は俯瞰でいろんなことを見ているし、没入するタイプではなく、どこか冷静に取り組むタイプだって思われていたので、「ØMIは大丈夫だろうって安心しきって、勝手にいろんなものを背負わせていた。ØMIが限界を迎えるまで気づかなくて、本当に申し訳ない」って言われました。当時の僕の心境としては、背負わされていたっていう意識もないし、みんなに謝ってほしいわけでもなかったんですけどね。でも、そういったやりとりを経て、ようやく「自分はこういうことが負担だったんだ」「無理していたんだな」って自覚できたところもあって。そこから状況が良い方向に変わっていったように思います。

――メンバーと腹を割って話せたことが、鬱から回復する大きなキッカケになったそうですが、そもそも、どうやってそこまで関係を修復したんですか?

ØMI:あの時の僕は普段の自分じゃなかったので、何かしなきゃいけないとは思いながらも、どうやってメンバーと接したらいいかわからなかったんですよね。最悪のコンディションの自分とメンバーが話したら、もっと良くないほうに進む気がして。それを避けたい一心で、心のシャッターを下ろしていました。それをメンバーも察しているから、いきなりシャッターをガラガラ開けてくるんじゃなくて、シャッターの下からちょっと覗いて「ど、どんな感じ……?」って探りを入れてくる、みたいな(笑)。そんな日々が続く中でじわじわ距離を縮めて、メンバー1人1人と話す機会を作った、という流れでした。

――そして、メンバー1人1人と話したことで「自分はこういうことが負担だったんだ」と自覚できたと。

ØMI:はい。メンバーから「背負わせて申し訳ない」って言われたこともそうだし、勝手に自分から背負っていたものもあったし。それに勝手に責任を感じて、自分で自分を苦しめていた部分もあったし。逆にメンバーが背負っていたものも知ることができたし……っていう、いろんなことに気づけました。そしたら、「全部、もうどうでもいいな」っていう境地に達したんですよ。「これは別に自分が背負っていなくていいんだな」ってわかったことで、良い意味で責任放棄ができるようになったんです。そこまでいったら、「もうやるしかないな!」って覚悟が決まって、病状も回復方向に。いきなり180度回復したかって言ったらそうじゃないけど、徐々に良くなる角度が上がっていって、メンバーや三代目JSBの活動と再び向き合えるようになりました。

――10年を越えるグループを見ていると実感しますけど、みなさん、歩み寄る努力をしていますよね。個人活動が年々盛んになっているからこそ、1つのグループでい続けるためには、相手を思いやる心とリスペクトが大事。

ØMI:僕も最近、よくメンバーに言うんですよ。「どれだけ自由でもいいし、自分のライフスタイルを大事にするのは構わないけど、お互いにリスペクトできる関係じゃないと上手くいかないよ」って。「同じグループにいる限りは、他のメンバーから何かしらリスペクトされるものを持っていないといけないと思う」って。そう自信を持って言えるようになったのは、この苦しみを経験したからだと思います。

「美しいまま終わりたい」という気持ちは今も変わらず

――……と、今までの話の流れで、ここからさらなる未来に向けて加速していくと思いきや、ØMIさんの中で生まれたのは「10周年のアニバーサリーツアー『三代目 J SOUL BROTHERS LIVE TOUR 2021 "THIS IS JSB"』を最後に、グループを解散したい」という想いでした。解散については、鬱になる前から考えていたんですか?

ØMI:考えていましたね。ただ、どちらにせよ、ファンの人からしたらバッドニュースでしかないんですけど、僕としては「もう解散でいいよ!」とか「俺、どうしてもやめたいんだ!」っていうネガティブな解散じゃなくて。冷静に自分達のグループ像を思い描いた時に、「もっともっと観たい」って求められている中で、美しいままステージを去るのが、一番僕ららしい終わりなんじゃないかなって思ったんです。で、そのベストなタイミングがここなのかなって思ったから、メンバーやHIROさんにも伝えて。結局その時は思い直しましたけど、「美しいまま終わりたい」という気持ちは今も変わらずにあります。なので、決して自分のメンタルがダウンしたから、それに紐付いてそういう答えが出たわけではない、というのを理解してほしいですね。むしろ、その経験をしたからこそ、10年後の未来に三代目JSBはいるのかな?って考えるようになりました。

――7人で活動している未来を考えるようになった、大きな理由はなんだと思いますか?

ØMI:近年のメンバー各々の活動やライフスタイルを見ていて、そう思ったんですよね。13年も一緒に活動していれば、1人1人がやりたいことや生活が変化するのは当たり前なので、これからもっと変わっていくだろうなと。

――グループが解散する=メンバーと縁が切れるわけではないし、長年一緒にやってきた仲間だからこそ、メンバーの新たな人生を応援したい気持ちがあるんでしょうね。

ØMI:そうですね。本文にも書いていますが、ボーカルって、やろうと思えば一生やれちゃう職業だと思うんですよね。たとえ僕が表舞台から退いたとしても、相方(今市隆二)が歌い続けていれば、老人ホームで2人で歌う未来もあるかもしれないなって思う(笑)。でもパフォーマーは体力的に限界があるだろうし、違う人生があるよな、とか。そういったことを考えた時に、だったら今の素晴らしい環境下で美しく活動して、今の自分達にできることを全てやりきったタイミングで、各自が思い描く次のステージに進むのがいいんじゃないかなと思いました。

――ちなみに、ソロアーティストØMIとしての活動も、昨年のフルアルバム『ANSWER…』のリリースと、単独ツアー『ØMI LIVE TOUR 2022 “ANSWER...”』を最後に止まっているのですが、それも、これを最後に表舞台から去るという想いがあってのことだったのでしょうか。

ØMI:その気持ちが全くなかったと言ったら嘘になりますけど……。ソロ活動に関しては、1つの作品を作り、ツアーを作り上げることの大変さ、1人でステージに立ち続けることの重圧を知っているからこそ、生半可な気持ちでできないというのが大きな理由ですね。『LAST SCENE』という言葉の通り、毎回のステージに全力で臨んできた僕だからこそ、今の自分に、もう1度同じくらいの情熱……いや、前回以上の情熱を懸けて、ステージを作り上げることができるのか?って考えたんです。この13年間、前回よりももっと良いものを作ることが当たり前だと思ってやってきたので、水準を下げることはできないし、スケジュールを押さえられるのかという時間的な課題もありました。その結果、次の制作のことはまだ考えられないなと思い至って、今は自分自身の音楽制作ではなく、次世代アーティストの育成やプロデュースのほうに力を入れています。

――ということは、またいつか、再びソロ活動を始める可能性も……?

ØMI:もちろん。また創作意欲が湧けば、そのエネルギーを持ってステージに上がるでしょうね。今回のフォトエッセイのイベントをやらせていただいて、それを臨んでくださるファンの方の声もたくさん届きましたし、前向きに考えたいと思っています。

――話を解散に戻しますが、一度、本気で解散に向かって動き始めたØMIさんを思い止まらせたのも、ファンの方の存在ですか?

ØMI:そうですね。10周年のツアーを廻る中で、これだけたくさんの人が三代目JSBを待ってくれているのに、僕が情熱を失うのはどうなんだろう?って思ったことが、僕の頑なな心を変えてくれました。あとはメンバーの存在も大きいかな。僕自身はすごく冷静に物事を考えて、状況を見極めようとしても、他のメンバーは違ったりして。事前に「このスケジュールでいこう」って決めていたとしても、彼らは急に「でも、ここでこれやるの、面白くね?」とか言い始めるんですよ(笑)。「ここにこういうチャンスがあるなら、やっちゃわない?」とか。そのポジティブマインドに突き動かされて、良い未来に向かっていくことが多々あるんです。それに対して、昔の僕だったら「いや、このスケジュールで決まっているから」って言ったかもしれないけど、今は自分が乗る船がそっちに向かっているなら、自分もストップをかけずに「分かった、俺も一緒に漕ぐわ。その代わり、俺にばっかり漕がせないでね」って言えるようになって(笑)。そういう関係性を築くことができたから、今年の三代目JSBは充実した活動内容でやれていますし、来年に向けてスムーズに進めているなと思います。

――今の三代目JSBは、『密着36時間 三代目JSBを2日間 自由にさせてみた』(ABEMA)で、7人でローションぬるぬる相撲をやれるくらい良い雰囲気ですからね(笑)。あれを見た時に一気に解散が遠のいたなって確信しました。

ØMI:あはははは! 確かに、数年前の自分だったら、「絶対やらない!」って言ってたんだろうなぁ……。でも、今は岩ちゃんに「ぬるぬる相撲やろう」って言われて、「オッケー!」って素直にローションを被っている自分がいるので、もう捨てるモノがあまりないんでしょうね(笑)。これはバラエティ的なノリですけど、近年の楽曲作りもそうだし、この本もまさにそのスタンスが出たものだと感じています。

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