悪役令嬢モノ、なぜ人気? はめふら、わたおし、溺愛ルート……話題作から読み解く面白さ

悪役令嬢モノ、なぜ人気?

 ゲームのシナリオという、ある意味で天命ともいえる枠組みから悪役令嬢は果たして逃れることができるのか。そんな問いかけをしているのが、十夜『悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!?』だ。アラサーの喪女だった主人公が、気がつくとよく遊んでいた『魔術王国のシンデレラ』に入り込んでいて、ヒロインを虐める適役のルチアーナという公爵令嬢になっていた。

 「はめふら」と同じ「悪役令嬢」の典型とも言える導入部だが、ルチアーナには転生者の記憶が目覚める前の怠惰な性格や不勉強ぶりが引き継がれていて、そこから鍛え直さなければいけないところが「はめふら」とは少し違う。いくら控えめに過ごそうと思っていても、目立ちたい心理が働いて前に出てしまう。

 これがゲーム内のきまりごとだとしたら、どれだけ破滅フラグを回避しても断罪の運命から逃れられないとあきらめてしまいそうになる。それでもルチアーナは、自分だけでなく周囲の人間の運命も変えようと奮闘する。近い将来大けがを負うと知っていた公爵家の嫡男ラカーシュや、自分が遊んでいたゲームには登場していなかったラカーシュの妹セリアの避けられないはずだった悲劇に果敢に挑んでいく。

 元より断られても踏みつけられてもこたえない鋼の心臓を持っていたところに、転生者の誰かのためになるのならといった性格が加わって生まれた"新生"ルチアーナがもてないはずがない。とはいえゲームシナリオの枷も気になるところ。楽天ブックスの週間ライトノベルランキング(9月11日~17日)で6位に入った最新刊『悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!?(6)』 (SQEXノベルズ)でもしっかりと生き延びては、王太子のエルネストとの関係を深めている。読み続けることで、運命だからと諦めない気持ちを養えそうだ。

 開き直ることで生き残る道をつかみ取った悪役令嬢が主人公の作品もある。日之影ソラ『ループから抜け出せない悪役令嬢は、諦めて好き勝手に生きることに決めました』(DREノベルズ)だ。

 異能を受け継ぐ名門に生まれながら能力が発動せず、父親に虐げられ婚約者からも蔑まれ、殺されたり自殺したりするたびに時間が巻き戻って、同じような悲劇に至ること9回。もう嫌だと好きなように生きることを決めたセレネは、家に伝わる【太陽】とは正反対の【影】を発動させて、父親を退け他の家に伝わる異能を奪って悪役として世界に君臨しようと決断する。ピカレスクロマンとしての面白さを持ったシリーズだ。

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