『光が死んだ夏』さらに磨かれた独創的ホラー表現 最新3巻の魅力を深掘り

『光が死んだ夏』のオノマトペ表現

 本作はこの世ならざるものを描くホラー作品である一方で、切なくも蒼々とした青春漫画という側面もある。ストーリーの中軸となるホラー的展開の合間に描かれる学校をメインとした日常描写は、思わず顔がほころんでしまいそうなほっこりとしたものが多い。ホラー描写が緊張であるならば、日常描写は緩和だ。この緩急が読者を一層惹きつけている。

 なによりも私はよしきとヒカルの関係に青春性を感じてしまう。よしきにとって光は、そしてヒカルにとってもよしきは友情以上の何かを感じる存在であり、だからこそ光が光でなくなりヒカルになってしまってもよしきは共に学校生活を過ごしている。一見すると矛盾した感情であるように思うが、光とヒカルの差に気付きながらもヒカルの内にある光らしさに愛憎が入り交じり葛藤するよしきの姿は切ない。その最たるものが3巻の終盤で描かれるよしきとヒカルがふたりきりで学校をサボり、映画鑑賞に出かけるエピソードだろう。成熟していないティーンエイジャーならではの心の機微が丁寧な筆致で描かれる本エピソード。その果てに起こるとある事件は、ふたりの今後の運命を大きく変えることになりそうだ。

 まだまだ残暑は続きそうである。本作のゾクゾクするホラー描写と蒼々とした青春描写はそんな残暑を乗り越えるのにはピッタリ。この暑さを『光が死んだ夏』で締めくくってみてほしい。

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