「BOOKMARKET2023」過去最多の出展数に 発見とコミュニケーションが詰まった本好きを魅了するブックイベント

過去最多の出展数! 本好きがあつまったBOOKMARKET2023

  全国各地で猛暑日となった7月15日と16日は本好きにとっても熱い二日間だった。読者がさまざまな出版社から直接本を買うことができる本のイベント「BOOKMARKET2023」が東京浅草の台東館で開催された。

  2009年に第1回が開催された「BOOKMARKET」は回を追うごとに大きくなり、コロナ禍により20年と21年は中止となったが昨年2022年に再開し、13回目となる今年は出展数も73社55ブースと過去最多となった。

「BOOKMARKET」の特徴とその魅力

   BOOKMARKETの最大の特徴といえば、本の作り手である出版社や作家から読者が直接本を買うことができるということだろう。手に取った本について読者が出版社の人に質問し、また編集者が自ら編んだ本を読者に勧めたりと、会場のいたるところで本を媒介したコミュニケーションが花開いている。また会場ではZINEや関連グッズ、アパレル、そして野菜(!)なども販売されており、本の裾野の広さを感じることもできる。

ミシマ社のブースでは読者が絶えず、本の会話を楽しんでいた
オススメの本が書かれた抽選箱。ネットにはない、本との偶然の出会いも面白い。
会場ではサイン本も大きな魅力
美しい装幀を見つけて、本作りについて質問するのもBOOKMARKETの楽しみのひとつ
パイインターナショナルでは、海外で人気の日本のイラストレーターなどなど面白いお話が聞けた
台湾関連の書籍を販売するハオチーブックスでは台湾製テント生地を利用した色鮮やかなブックカバーが目を惹いた
移動八百屋のwarmerwarmer。『古来種野菜を食べてください。』(晶文社)など著作と合わせて野菜を販売。この日は夏野菜が人気だった
早川書房ブースはHAYAKAWA FACTORYブランドでSF小説やミステリなどをモチーフにしたTシャツなどオリジナルグッズを販売
購入した方がロビーで自慢していた藤原印刷さんの「束見本」(製本時のイメージを知るために作られるサンプル)

著者や編者と気軽に出会える

  また、開催期間中は各ブースで著者によるサイン会や、会場限定のためし読み冊子の配布、そして一般販売に先駆けての新刊の先行発売などもあった。本について話し込んでいた相手が実はその本の編集者だったりと、和やかな雰囲気のBOOKMARKETならではの光景も見られた。

『夜行貝のひかり』(文研出版)の著者、遠藤由美子さん [よはく舎ブース]
笠間書院では『物語のカギ』(笠間書院)著者、渡辺祐真/スケザネさんのサイン会
漫画家の大橋裕之さんによる似顔絵屋。[カンゼン]
自著にサインをする夏葉社の島田潤一郎さん

本は絶えず“発見”され続けている

  BOOKMARKETには毎回たくさんの読者が訪れるが、そのたびに出版社から聞くのは「みんな本が好きで、たくさん本を買っていく」という言葉である。イチ読者として訪れた知り合いの書店員も会場の熱気を感じて「こんなに本を買う人がいるなんて」と溜息を漏らしていた。コミュニケーションの場としてのBOOKMARKETは先に述べたが、もちろんすべての人たちがコミュニケーションを目的に来ているわけでなく、なにか目当ての本を買いに来るような場所でもない。出展している出版社の多くの刊行物は、一般の書店でも購入できるのだ。また痛み本など例外を除き、基本は値引き販売はしていない。なのになぜ“わざわざ”BOOKMARKETに来て本を買っているのか。

  そこで出展社のパイインターナショナルさんに頼みこみ、本を買った読者に「なぜBOOKMARKETに来たのか」という質問をしてもらうことにした。

  すると、意外なことに「書店では見ない本が置いてあるから」という答えが読者から返ってきた。もちろんZINEなど、一般に流通していない本もあるが、そのニュアンスは会場全体の本を指しているらしかった。また本の雑誌社の杉江氏に訊ねると、よく売れたのが『北緯66.6°』(森山伸也/本の雑誌社)で、これはなんと2014年に刊行されたものだという。9年前の本ではあるが「出会ったときが新刊」という言葉があるように、本との特別な出会いの場所として、常に新鮮な景色を読者はBOOKMARKETで見ているのかもしれない。見え方、出会い方によって本は絶えず“発見”され続けているのである。

手に取ったその本は、その人にとっての新刊なのである
1冊買うとスタンプカードにスタンプひとつが押され、スタンプ三つを集めるとオリジナルトートバックがもれなくプレゼントされる
マイ本棚を背負って来場された堤さん。“公共性について”のユニークな社会実験中

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