図書館、官民連携・巨大化続くのはなぜ? AIサービスなど進化著しい理由

図書館、官民連携・巨大化続くのはなぜ? AIサービスなど進化著しい理由

 2000年以降に誕生した地方の図書館で話題になった例といえば、佐賀県武雄市の「武雄市図書館」ではないだろうか。当時の武雄市長・樋渡啓祐の肝いりでリニューアルされたこの図書館は、2013年からTSUTAYAが運営に関わり、店内にはスターバックスが併設され、何より斬新なデザインの建築も話題を呼んだ。

  武雄市図書館に関しては賛否両論があり、議論を巻き起こすことになった。とはいえ、一時は自治体の視察も相次ぎ、佐賀県を代表する観光名所となった。これを機に図書館の在り方について議論が深まったのは間違いなく、斬新な図書館が次々に登場していくきっかけを生んだと言っていい。その勢いが近年、また加速している。

  近年の図書館の傾向としては、規模の巨大化、官民の連携、そして斬新なサービスが目立つ。これらの点に着目して、印象的な事例を見てみよう。

  例えば、2027年度後半の開館を見込む、新しい「静岡県立中央図書館」は延べ2万㎡、事業費192億という巨大なものになる。東静岡駅に隣接して建設され、低層階には地域に開かれたオープンスペースを多く設けつつも、高層階には調査に没頭できる静かな空間を設けるなど、棲み分けがなされている。

 「静岡県立中央図書館」は県庁所在地の中核を成す図書館であるが、人口約7万人の地方都市である宮城県登米市でも、現在の2.5倍という規模の新図書館の建設が構想されている。2028年を開館目標とし、蔵書は約30万冊に達する見込み。

  官民の連携によって、図書館を生み出す動きは続いている。岐阜県可児市では、「無印良品」の店内に図書館分館を設けるという。蔵書は約2万冊、11月オープンに向けて準備を進めている。「無印」と自治体がこうした連携協定を結ぶのは全国初であり、同社が持つデザイン力とブランド力を生かした図書館が誕生する予定だ。

 また大阪の十三駅の再開発では、阪急阪神不動産と髙松建設が公共図書館と学校図書館が相互連携を図り、国内初の図書館モデルを核として、地域コミュニティを育む拠点を目指すプロジェクトを2026年にスタートする予定だ。

  そして、流行のAIが図書館にも進出しつつある。新潟県新潟市の「新潟県立図書館」では、7月11日より、図書館に行かずともスマートフォンやパソコンなどで電子書籍が読めるサービスの提供を開始した。AIが文章読み上げを行うもので、専門書やビジネス書などおよそ3000冊が対象。文字が読むことが難しい人、目が見えない人にも優しいサービスとなっている。

  図書館は本との出合いを提供するだけでなく、調べものなどの学習の拠点、そして地域の歴史を守り伝える拠点としても欠かせない存在である。人々が交流する以降の場としての機能、そして静岡県立中央図書館がそうであるように、賑わいの創出なども期待されている。

  様々な事例を俯瞰してみると、図書館の理想形は決して一様ではなく、それぞれの自治体や地域性にあった形に進化しているのがわかる。図書館はただの本が読めるハコではなく、コミュニティ、観光などの面でも欠かせないものになった。魅力ある施設とすべく官民の連携も進んでいくと思われるが、その場合は地域住民に対して開かれた透明性も必要になってくるだろう。2020年代、相次いで完成する予定の図書館が創造する未来に期待したい。

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