『わたしの幸せな結婚』は想像以上のスケールにーーハッピーな最新刊への期待
第五巻の「あとがき」で、「物語を書き始めた頃は、一巻の嫁入りと、二巻の薄刃の話を描き切れば満足だ、くらいに考えていた」といっているので、作者もここまで話のスケールが大きくなるとは思わなかったろう。だが、自らの書いた物語に背中を押され、顎木あくみ逞しく成長した。作者いうところの「甘水編(仮)」を描き切ったことは、大きな財産になったといっていい。
また、美世と清霞の関係も見逃せない。清霞との暮らしにより、幸せを手に入れた美世は、もっと大きな幸せが欲しくなる。しかしそれにより、今の幸せを失うことを怖れている。ふたつの気持ちの間で、心が揺れる美世。己の逡巡が事態を悪化させたのではないかと悩みながら、愛する清霞と、自分を認めてくれる人々のため、甘水と対峙する美世を応援したくなるのである。
もちろん清霞の方も、変わっていく。朴念仁な男だが、美世に対する気持ちを、きちんと口にするのである。もうすぐ発売される第七巻は、作者曰く「ハッピーな巻になります(予定)!」だそうだ。(予定)が、いささか気になるが、ふたりのハッピーな姿を見られることを、期待している。