小籔千豊 × 三代目JSB・ELLY『フォートナイト』対談 「ゲームは人間関係を構築するうえでのメリットが多い」

小籔千豊 × 三代目JSB・ELLY 対談

 芸人・小籔千豊にとって初となる書籍『ゲーム反対派の僕が2年で4000時間もゲームをするようになった理由』(辰巳出版)は、もともとは自身の子どもにゲームをさせないという教育方針だった小籔が、世界中で人気のオンラインゲーム『フォートナイト』にハマったのをきっかけに考えを改め、ゲームを始めたことでむしろ親子関係にポジティブな効果があったことを綴った一冊だ。

 「フォートナイト」といえば、三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのELLYが「リテイルローの村長」として名を馳せているゲームでもある。実際に小籔とともに『フォートナイト』をプレイしたこともあるELLYは、小籔の書籍をどのように読んだのか。「ゲームとコミュニケーション」というテーマで対談してもらった。(編集部)

小籔「ELLYさんほどの実力者はなかなかおらへん」

小籔千豊

――ELLYさんは、小籔さん初の単著となる『ゲーム反対派の僕が2年で4000時間もゲームをするようになった理由』を読み、どのような感想を抱きましたか。

ELLY:僕のように『フォートナイト』のプレイヤーはもちろん、まだ知らない方々が読んでも新鮮でおもしろい本だと思いました。特に小籔さんが『フォートナイト』にハマるまでの流れが楽しかったです。

小籔千豊(以下、小籔):最初は息子に誘われてなんとなくやっていたのが、4~5回やったら不思議と楽しくなってきてしまい、このゲームについて深く知りたくなったんですよ。

ELLY:『マインクラフト』は教育にも良いイメージがありますが、あえてそちらには行かなかったのだなと。

小籔:そうですね。他にも『スプラトゥーン』や『大乱闘スマッシュブラザーズ』も薦められましたが、タイミング的なこともあってかハマりませんでした。武器がなくて慌てて拾いにいったり、壁を立てて相手の攻撃を防いだりと、『フォートナイト』には今までのゲームにはなかった要素があって、それが不思議で興味を持ったのかもしれません。ELLYさんはどんな風に『フォートナイト』にハマったんですか。

ELLY:「海外で流行っている面白いゲームがある」と聞いて知りました。当時は周りにやっている人が少なかったので、ネットで検索したところ、海外のアーティストやセレブがゲーマーと一緒にプレイしている動画を観たんです。日本ではまだ「ゲーマー=オタク」といった固定観念があったと思うのですが、『フォートナイト』にはそういう垣根がないんだと知りました。僕がプレイすることで、日本でもそういう垣根がなくなったら面白いなと思い、ゲーマーの友人たちと一緒に「リテイルローの村長」として遊び始めました。

小籔:ELLYさんはずいぶん早くからアンテナを張って、『フォートナイト』をやり込んでいましたよね。僕が建築もままならない時期から、ELLYさんが所属するリテイルロー軍団の人たちはめちゃくちゃ上手くて、すごい技とかもやってました。芸能人も一人のプレイヤーとして参加しているのが新鮮だったし、一緒にプレイした時はELLYさんにずいぶんと助けてもらいました。ELLYさんは世界大会にも行くほどの腕前で、僕とはぜんぜん実力が違かった。でも、トータルプレイ時間はそんなに変わらないんじゃないんですか?

ELLY:そうかもしれません。ある程度、プレイできる状態になってから表に出てましたから(笑)。

小籔:やっぱりそうですよね。毎日10時間以上やってたって言ってはったから。でも僕は同じくらいの時間を費やしても、さほど上手くはならずでした(笑)。僕以外だと芸能界のガチ勢はELLYさんくらいじゃないですか? 笑い飯の西田(幸治)とか、モンスターエンジンの大林(健二)はやってますが、ELLYさんほどの実力者はなかなかおらへん。

ELLY:いやいや(笑)。僕はライブなどもあり、やらなくなった時期もあるので。小籔さんこそ、ずっとやり続けて、いまや『フォートナイト』芸人の神様的な立ち位置にいらっしゃると思っています。

小籔:『フォートナイト』芸人の神というより姫やね(笑)。フットボールアワー・後藤(輝基)のお子さんや、山田花子さんのお子さんまで僕のことを「姫」と呼ぶんですよ。

ELLY:「hime_zoyo」とプリントされたTシャツも着ていますよね。なぜ「姫」という愛称が付いたのですか。

小籔:有名ゲーマーのハイグレ玉夫さんのような上手い人らと一緒にやる時に「姫プ(姫プレイ)しましょう」と言われたんです。僕はその用語を知りませんでしたが、上手くない女の子が配信している時に、上手な人たちが周りを固めて1位をプレゼントすることなんですね。

 それで「金ポン(金ポンプ)」をもらった時に「わらわは『タクショ(タクティカル・ショットガン)』の方がいいぞよ」と返したらウケたんですよ。僕は日本の姫を連想してそういう返しをしたのですが、皆さんはプリンセス的な姫を想像していたようで、逆にウケてそこから「姫」と呼ばれるようになりました。つまり「姫」という名前は下手くその象徴なんです。

ELLY:「hime_zoyo」にはそういう意味があったんですね、ヤバいなあ(笑)。最初に「フォートナイト下手くそおじさん」という名前を聞いた時のインパクトも忘れられません。

小籔:ELLYさんの「CrazyBoy」という名義はかっこいいけど、下手くそおじさんと一緒に並ぶと、なんだかまともではない印象になりますね(笑)。

ELLY:(笑)。『ゲーム反対派の僕が2年で4000時間もゲームをするようになった理由』には、『フォートナイト』が親子のコミュニケーション・ツールになっていることも書かれていますね。

小籔:もともと親子の会話を増やそうと思って始めたわけではないんです。でも僕のYouTubeチャンネルのメイン視聴者は子持ちの30~50代ですが、なぜゲームをやっているのかという質問に「子どもと一緒にやって親子の関係が変わり、会話も増えました」と答えると「うちも同じです。子どもが上手いけど仲良くなれた」という返答が多い。ゲームが親子を繋ぐツールになっているなと感じたので、それを多くの人に伝えたいと思いました。

ELLY:同じゲームが好きな人が集まったところに色々な会話が生まれて、知らない人ととも出会えるのは『フォートナイト』の一番の魅力ですね。野球をやっていた時のような、学校の部活感もあるのもいい。『フォートナイト』に限らず、ゲームには人間関係を構築するうえでのメリットが多いと思います。

小籔:漫画やスポーツも親子の共通の趣味になりえるのですが、その場合は大人の方が詳しかったり、多くを経験していたりします。そうなると大体の場合、大人が子どもを教えることになるのですが、『フォートナイト』の場合は逆で、大体が子ども優位。これは他の趣味ではなかなかない現象なのかなと。大人が偉そうにできない世界が新鮮でした。男女や年齢を問わずに公平にプレイできるのも、ゲームの魅力だと思います。

ELLY「ゲームにはまだまだ可能性がある」

ELLY

小籔:ところでELLYさんは、パッド(ゲームのコントローラー)ではなく、ちゃんとキーボードとマウスで操作するスタイルですよね。世界大会に出場する人は9割がキーマウですが、おっさんには取っつきにくいので僕は避けてきました。それに、僕は「スカフインパクト」というコントローラーを8個くらい買ってしまったので、ここから乗り換えると合計30万円ほどの投資が無駄になってしまう。それで躊躇してます。

ELLY:小籔さんは2年で4000時間もプレイしているんですから、そのうちの100時間くらいを移行に充てていれば、キーマウできたと思います(笑)。

小籔:そうですよね、ほんまに(笑)。Nintendo Switchではなく、最初からPCでスタートしていれば……。吉本の後輩でも3週間くらいかけて移行した奴がいるんです。最初は「換えたてですみません」と言ってもたついていましたが、1カ月後にはスムーズになって、半年後には上手くなっていましたね。キーマウの壁を超える根性が偉い。

ELLY:小籔さんの実況は、上手くないところからスタートしているところに価値があると思っています。ちゃんと上手くなる過程をストリーマーとして見せていて、勝ち負け以外のコミュニケーションや、会話の内容も含めて楽しい。個性的な実況者は多いなかでもオンリーワンの存在で、みんなに愛されているなと。

小籔:ありがとうございます。思えば、世界的チーム「Crazy Raccoon」のオーナーである「リテイルローのおじさん」が僕のチャンネルに遊びに来てくれはったのが、ELLYさんと知り合うきっかけでしたね。リテイルローのおじさんが「リテイルローの村長もいるよ」と連れてきてくれはったのがELLYさんだった。その時も一緒に「姫プ」させてもらって、ELLYさんやあんないさん、リテイルローのおじさんが強い敵をやっつけてくれました。

ELLY:懐かしいですね。あの時は「リテイルロー軍団で小籔さんをチャンピオンにしないとまずいぞ」という空気が流れてました(笑)。

小籔:お三方のプレイに緊張感がありましたね。

ELLY:僕は何よりも「小籔さんが『フォートナイト』をやるんだ!」という驚きがありましたよ。あれからもう3年が経つとは。

小籔:僕はELLYさんをはじめとした多くの人に教えてもらって、『フォートナイト』やYouTubeの世界を知ることができました。この世界がこんなにも奥深くて面白いとは、思いもしなかったです。ELLYさんは先ほど、世界のゲームカルチャーのように、日本でも垣根を取っ払っていきたいと仰っていましたが、僕も僕なりに『フォートナイト』を盛り上げて、ゲームやYouTubeの先人たちに「小籔がプレイしてよかったな」と思ってもらいたいですね。

ELLY:日本にはありとあらゆるエンタメジャンルがありますが、中でもゲームにはまだまだ可能性があると思います。特に『フォートナイト』の盛り上がりには大きな可能性を感じました。実際、その後『フォートナイト』のなかでトラヴィス・スコットがライブをしたり、ゲームがプラットフォームとなってさまざまなエンターテインメントが交差する場にもなっている。あの直感はやはり、間違っていなかったなと思います。家からバーチャルな世界に入って、音楽やダンス、お笑いなどのエンタメを楽しめる時代は、すぐ側まできているのかもしれませんね。

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