ダースレイダー連載小説『Mic Got Life~ライム&ライフ~』第6回「パーティー!」

 そうこうするうちにサカに教えてもらったパーティーの日だ。ウィズダムが終わってからヤマジと会場を探した。センター街の突き当たりの雑居ビルの地下だった。店の名前がどこに書いてあるのかわからなかったがパーティー! パーティー! というロゴの紙が大きく張り出されている。

 「ここっぽいね」

 「クウ、俺、正直こういうとこ来たこと無いからさ……でも初心者だってバレるのも嫌だよな」

 「俺だって来たことないよ。ま、仕方ないよ。あんまわかんないノリだったら帰れば良いし」

 そんなことを話しながらもなんとなく階段を降りるのが躊躇われていた。するとひゅっと横に一人の小柄な男がやってきた。

 「お二人、サカ君の友達でしょ?こないだセンター街の入り口で話してたよね?」

 「あ、そうだけど……」

 「ども〜。俺、林です! よろしく。遊びに来たんでしょ?」

 林は160センチそこそこで小柄、ポロシャツにショートパンツでピカピカの大きいスニーカーを履いていた。長い髪をオールバックにして固めていて、彫りの深い顔でニカっと笑っていた。

 「パーティー初めてっぽいね! 俺に任せといてよ。常連みたいなもんだから」

 「へえ、助かるね。俺ヤマジって言うんだ。こいつはクウ!」

 「よろしく。」

 林は手を差し出してき他ので僕らもぎゅっと握手した。なんだかやたらと軽い男だ。その軽さそのままでタッタッタと階段を降りていく。入り口でドレッドを上に束ねた女性が受付をしていた。

 「ども〜!」林がパーッと中に入っていく。女性がこっちを睨むように見て来たので恐る恐る紙チケットを渡す。女性は黙って受け取った。大丈夫だろう、と急いで林のあとをついて行った。

 扉を開けると中は暗いが人でいっぱいだ。ミラーボールがキラキラ回ってダンスフロアで大勢が手を挙げながら踊っている。すると聞き覚えのあるイントロが流れ始めた。
 
 「あ! ハウス・オブ・ペインだ!」

 ハウス・オブ・ペインの名曲「ジャンプ・アラウンド」が爆音でかかるとフロアが狂ったような空気になった。フロアの男たちは突然輪っかを作ってぐるぐる飛び跳ねながら走り始めたのだ。え、なにこれ?と呆気に取られていると林もその輪に飛び込んでいった。

 「ジャンプアラウンド! ジャンプアラウンド!」

 みんな絶叫しながらぐるぐる走っている。僕とヤマジは輪には入れず、ぶつからないように壁際に寄って突然始まった異様なテンションのノリを見ていた。すると今度は続け様にニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーンスピリット」が流れた。いよいよフロアは半狂乱の様相を呈してきた。ギターリフに合わせて全員が体を上下させながらいよいよ輪っかが激しく回り出す。

 「いってくる!」

 気づくとヤマジもその輪に飛び込んでいた。大好きなニルヴァーナに引き込まれたのだろう。林もヤマジも数十人の何やらすごいエネルギー体の一部になったみたいで個別には判別できなくなっていた。そのエネルギー体がぎゅわんぎゅわん揺れながら猛スピードでダンスフロアをぐるぐる回る。そして、エネルギー体が大声で絶叫する。

 「ヘロー! ヘロー! ヘロー! ハウロウ!?」

 「ヒア・ウィー・アー・ナウ、エンターテイン・アス!」

 ギターのリフがザクザクと鳴り響き、いよいよエネルギーが増大していった。

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