その新興宗教は“笑顔”の下に何を隠している……漫画『スマイリー』が描き出す、邪悪な野望

新興宗教の闇を描く漫画

 笑顔はいいことだと言われている。多少辛いことがあっても無理に笑顔を作ると気分が上がったり、コミュニケーションもスムーズになったりする。それに免疫力も上がるそうだ。ポジティブなイメージが多いが、その笑顔を邪悪に感じさせる漫画がある。服部未定著の『スマイリー』(日本文芸社)だ。

笑顔は感情を隠す

 「あなたは今笑えていますか? 」と問われて、ハッとしない人はいないかもしれない。少なくとも筆者はそうだ。銀行口座の減り具合と生活必需品の物価上昇に頭を悩ませ、眉間に皺を寄せながら必死に生活しているからだ。そんなときに「笑えているか」と聞かれたら、将来への心配もなく心から笑えたのはいつだったのか考えてしまうだろう。だが、それは社会の暗部に突き落とすワナなのだ。

 『スマイリー』は、笑顔の下に邪悪な心を隠した新興宗教と、フリーライター鴨目友司の戦いを描いたサスペンス漫画である。笑顔を善とする「心笑会」の真の目的はわからないが、それは、邪魔するものを徹底的に排除してまで守り抜くに値するらしい。心笑会に入信した妻を救うために、教団に潜入調査入りしている鴨目は、心から笑うための修行を重ねるうちに教団が理想とする笑顔を習得していく。その、お面を貼り付けたような無感情の笑いからは、感情が全く読み取れない。

 果たして笑顔とはなんなのか。人がポジティブに感じる笑顔と恐怖を感じる笑顔にはどんな違いがあるのだろうか、そんな哲学的なことを考えたくなってくる。

宗教団体は何がしたいのか

 最新の第4巻は2月17日に発売されたばかりで、先にも書いたように、心笑会の真の目的は明かされていない。だが、ある団体の中核や政治家との関わりが示唆されたことで、なんとなくどんな方向を目指しているのかがかすかに見え始めた。

 潜入調査をしている鴨目を始め、教団を捜査している人たちは、教団が国を動かす人々と関係を結んでいることを突き止めると、より一層に危機感を募らせ、一刻も早い取り締まりに向けて動き出す。だが、教団関係者は至る所にいて、監視の目を強化させているために物語のスピードが遅い。鴨目たちが努力して情報を掴んでも、常に教団に出し抜かれる。そして、この恐ろしい出来事は、国民の大半が知らない合間に起こっているのだ。

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