『ザ・ファブル』こそ令和の王道ヒーロー物語だーー古典的な設定 × 現代的ディティールの妙
「狭い人間関係の中で話を進めていくのも、本作の面白さです。たとえばアキラたちがコロナ禍で始めた『レンタルおっちゃん』の仕事で、雇い主となった女性が実は重要なキャラクターだったことが後に判明したり、気を付けて読んでいても『そうなるんだ!』と驚かせる展開がある。何気なく描かれる日常の背景にもさまざまなドラマがあって、それを交差させていくところが巧みです。
また、第一部ではアキラが正体をバレないようにしながら、ヒロインのミサキを守ろうと活躍するところに緊張感があり、物語を前に進めるための力にもなっていましたが、第二部では二人が結婚してその縛りがなくなったため、物語がどこに進んでいるのかわからない面白さもあります。最新刊ではついにファブルVSルーマーの直接対決が幕を開ける展開となりますが、最終的にどこが着地点となるのかが読めません。きっとまた、驚くべき展開が待っているはずです」
『ザ・ファブル』は、普段はアウトローたちの活躍を描いた漫画を読まない方にも勧められる作品だという。
「未読の方は本作に対して、バイオレンスな漫画だという印象を抱いているかもしれませんが、それだけに止まらない懐の深さがある作品です。スタイリッシュな暴力表現は、間違いなく本作の魅力の一つですが、それだけでこれほどの人気作にはなり得ません。コメディ要素や人情物語としての要素もふんだんに盛り込んだ、笑って泣ける最新のヒーローアクションとして、多くの人が楽しめるエンタテインメント作品に仕上がっていると思います」