本離れではない? Z世代がやってみたいアルバイトで書店員が3位に 人気の理由は「制服人気」と「グッズショップ化」が関係?


 Z世代の間で書店員の人気が上昇しているという。日本語キーボードアプリ「Simeji(シメジ)」を手掛けるバイドゥのアンケート調査によると、Z世代(10~24歳)を対象にした「一度はやってみたいバイト」ランキングで、1位は「カフェ・喫茶店」、2位は「ペットショップ」、そして3位が「本屋」となった。

 電子書籍で本を読む人が増加しつつある昨今、都心を含め、急激に書店の減少は続いている。そんな中でなぜ、リアル書店が憧れのバイト先に選ばれているのだろうか。

 書店員のバイトを志望する動機として、漫画や小説など「本が好き」という理由を挙げる人は多い。筆者の知り合いには、漫画家を目指して投稿を続けながら書店員として働いる人がいるが、出版業界やクリエイティブな職種を目指す人にも人気のバイトだ。クリエイティブな感性の持ち主はポップを作る職人として活躍したり、店内を独自にデコレーションして評判になり、マスコミの取材を受けた例もある。

 書店はこういった感性が生かされやすい場でもある。そして、流行の最先端に触れられる場所でもあり、特有の文化的な香りが感じられることも人気の要因のようだ。

 また、近年の都心部の書店は、とにかくスタイリッシュでおしゃれになっている。スターバックスやタリーズなどのカフェが併設されていることもあるし、ファッションアイテムやアニメグッズなどが扱われ、一種の雑貨店を思わせる雰囲気の店もある。店内の雰囲気が明るくなり、若い世代に支持されやすい場になっているのだ。

 バイトの制服も見逃せない。実は、カフェ店員と書店員の制服は、ポロシャツにエプロンを身に付けるなどそのカジュアルさに共通点が多い。こうしたスタイルに憧れを抱く人は少なからずいるようだ。

 漫画の影響もあるだろう。近年、書店員が主人公の漫画が多数出版されている。書店員もしくは元書店員が漫画を描く例も多く、本田の『ガイコツ書店員 本田さん』(KADOKAWA)や、いまがわゆいの『本屋図鑑 だから書店員はやめられない!』(廣済堂出版)などのエッセイ漫画などがその代表格である。ギャルと書店という異色の組み合わせが話題のTwitter漫画『ギャルと国語辞典』の野中かをるも元書店員という経験をもち、現場を知る漫画家ならではの目線で書店の風景が描かれる。


 赤本や『チャート式』、『マドンナ古文』シリーズなど、学習参考書が実名で登場する佐原実波の『ガクサン』(モーニングコミックス)は学習参考書を出版する出版社が舞台だが、主人公が書店に営業へ行く場面が描かれている。書店の美しい売り場や書棚はどのように作ればいいのか……などといった、書店員も参考になるような豆知識も豊富だ。読めば(受験生でなくとも)書店の学参コーナーに入り浸りたくなること間違いなしである。

 こうした「書店」「本」そのものが題材になる漫画も、書店員への憧れを強める要因なのかもしれない。

 電子書籍が急激に浸透している時代とはいえ、書店がなくなることはないだろうし、流行発信やコミュニケーションの場としての役割は依然として大きい。書店といえば閉店が相次ぐなど何かとネガティブなニュースが多いが、そんな中で若者が書店員を選んでくれているメリットは大きい。若い感性を発揮し、現場を改革する人材が出てくるのではないか。「本屋大賞」などで書店員の存在感は年々増している。カリスマ書店員、インフルエンサーが続々登場し、業界を活性化させてほしいと強く願っている。

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