『霊媒探偵・城塚翡翠』ドラマ化で大注目! シリーズ最新作『invert Ⅱ 覗き窓の死角』の衝撃
さらに、いままでになく翡翠のキャラクターが掘り下げられていることも、大きな読みどころになっている。ここで留意すべきは犯人の詢子だ。倒叙物の利点に、最初から犯人を明らかにしているため、その内面をガッチリと描ける点が挙げられる。作者はそれを十全に活用。読めば分かるのだが、詢子と翡翠が、合わせ鏡のような存在であることが、しだいに露わになる。二人とも過去の出来事を原因(翡翠の方は不明な事が多いが)として、今の行動があるのだ。ただし詢子と翡翠の在り方は正反対である。詢子は怨みを晴らすために殺人を犯した。翡翠は人が人を殺すことがない世界を求めて探偵をしているのである。
いうなれば闇の道と光の道だ。しかし翡翠の光の道は、茨の道でもある。なぜならこの世界から、殺人がなくなることはないのだから。そんな翡翠を詢子と対決させることにより、作者は主人公の抱えている苦悩や憤りを、鮮やかに表現してのけた。シリーズは第三弾になって、さらなる深化を遂げたといえるだろう。
なお、「城塚翡翠」シリーズを原作とした連続ドラマが、日本テレビ系で十月より放送されるとのこと。城塚翡翠役は清原果耶。小説ならではの面白さを、どう映像に転換するのか、今から楽しみにしている。