『邪神ちゃんドロップキック』10周年 著者ユキヲに聞く 悪魔と人間の居候モノがここまで読まれる理由

――お話を伺うと、趣味はもちろん縁の深い土地など、ユキヲ先生が好むあらゆる要素が凝縮されているのがわかります。ユキヲ先生は、以前は美少女系の漫画家というイメージがありましたが、ギャグ漫画もお好きだそうですね。美少女もギャグもてんこもりの『邪神ちゃん』は、先生が描きたいものが盛り込まれた漫画だと思います。

ユキヲ:一番描きたかった漫画が、「考えるより感じろ」的な不条理ギャグやシュールな作品なので、邪神ちゃんはそれに近い感じで描けているかなと思ってます。キャラクターはすべてのキャラに愛着があるのですが、なかでも「ゆりね」と「ぽぽろん」が特に気に入っています。先に話したように、ゆりねはずっとあたためていたキャラ。あと、僕は少女漫画が好きなので、ぽぽろんにはそのテイストを入れています。

ご当地コラボも盛んに行っている。北海道の釧路市、帯広市、富良野市、そして長崎県の南島原市である。パネルの前に立つと、邪神ちゃんがそれぞれの自治体の見どころを紹介する音声が流れる。

――そんな『邪神ちゃん』も10周年です。

ユキヲ:10年も同じ漫画を描けていることを、光栄に思っています。毎回一生懸命描いてきたので、10年があっという間でした。連載を始めたときには、こんなに続くとは思っていませんでした。アニメも3期まで続いているのは、スタッフのみなさんが素晴らしく、編集さんもアニメに関わっている方々もみんないい人たちだからです。

――特に、編集さんとは10年間一緒に漫画を創り続けているそうですね。

ユキヲ:編集のIさんは立ち上げからずっと関わってくださっているので、作品の世界観の共有ができているんですよ。もはや、いなきゃ困るというレベルで信頼しています。実はIさんは僕より6歳年下なのですが、アニキ的な感じで頼っていますね。周囲に支えられているおかげで、連載中に辛い思いをほとんどしないで済んでいるのも嬉しいです(笑)。

――長期連載になり、世界観がますます膨らんでいますよね。これから登場する新キャラクターにも注目してしまいます。

ユキヲ:10年続けて、ある程度キャラクターが増えた気がするので、新キャラクターの追加は当面はないと思います。僕がよっぽど新しい属性が目覚めたら、追加してみたくなるかもしれませんが。

ユキヲが描いた歴代の扉絵や、各種グッズのために描き下ろしたイラストも展示。

――さすが、ユキヲ先生ならではのこだわりを感じます。そして、次はいよいよ20巻が発売されるわけですが、節目ですし、どんな絵になるのか気になります。

ユキヲ:まだ構想はぜんぜんなくて、アニメが終わったときの心境で決めたいと思っています。というのも、1期、2期のときは、アニメが続く可能性も少しはあるんじゃないかと期待していましたが、3期が終わることを考えると、本当に寂しいんですよ。そもそも3期まで続いたことが奇跡のようなものですし、4期はあるのかな…と神に縋る思いでアニメを見ています。3期までアニメを続けていただいて、ありがたいことにファンも増えて、反応もいいんですね。

――ファンの皆さんも、アニメが終わってほしくないと願っていると思います。

ユキヲ:アニメが終わった後、さみしくなっていたファンのみなさんが笑顔になれるような絵にするかもしれないし、僕が吹っ切れて全然違う表紙を描くかもしれません。とはいえコミックスの表紙を描くのは楽しい作業で、毎回、見て楽しめるデザインを考えています。

――10年間の歩みが展示されている「邪神ちゃんテン」の見どころを教えてください。

ユキヲ:漫画やアニメなど、『邪神ちゃん』に関するあらゆる展示があります。アニメの原画を見て「あのシーンはこの原画から出来てるんだ」とか、漫画の生原稿を見て「これが掲載時にああなるんだ」とか、漫画の邪神ちゃん、アニメの邪神ちゃん両方の制作過程を楽しんでいただけると思います。

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

 ユキヲ:読者の皆様のおかげで、大好きな『邪神ちゃん』の仕事を続けることができています。本当に感謝しかありません。応援のあるかぎり続けていきたいと思っていますので、今後とも『邪神ちゃん』を宜しくお願いします。可能なら、あとさらに10年続けたいです。邪神ちゃんの今後の展開は、アニメ公式や「COMICメテオ」のサイトでチェックしていただければと思います。

■『邪神ちゃんテン』は入場無料で撮影可能な太っ腹の展示会

 筆者は『邪神ちゃんテン』を取材した。現在放送中のアニメ3期の原画のほか、声優やアニメスタッフから寄せられた色紙、そしてファン垂涎の漫画の原画(線画)まで、貴重な資料が目白押しであった。このボリュームで入場無料であり、さらに会場のほとんどの展示が撮影可能というのも太っ腹で、驚きだ。

 長年に渡って原作のファンという人も、アニメを見て初めて邪神ちゃんに触れた人も楽しめる展示になっている。ぜひ気軽に足を運んでほしい。

邪神ちゃんテンの情報はこちら

「邪神ちゃんドロップキック」COMICメテオの情報はこちら

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる