【漫画】中華料理屋でバイトする不器用な少女、その正体は? 優しい交流を描くあたたかな物語『たぬきはたぬき』

【漫画】勤労少女の正体はたぬき?

「人間という生き物は普通/1日8時間も働くのだと聞いた」

 中華料理店でアルバイトに励む三つ葉は、少し不器用なところがある女の子。実は、彼女の正体は人に化けることのできる狸であり、三つ葉は立派な人間になるために奮闘していたーー。「COMICリュウ」で連載されている『たぬきはたぬき』(RYU COMICS/徳間書店)は悪戦苦闘する三つ葉の姿を通じて、1日に8時間ほど働くこと、数万円の家賃を毎月払いながら賃貸物件に住むことなど、多くの人が当たり前のようにこなす日々を俯瞰し、あたたかく肯定してくれる作品だ。

 上手に生きることができなかった三つ葉が周りの力を借りながら、少しずつ豊かな日々を過ごせるようになっていく第1巻。対して2026年7月13日に発売される第2巻ではお洒落な女の子・千砂が新たに登場したりなど、物語の展開が大きく変化していく。あたたかな物語と可愛らしい三つ葉の姿が印象的な本作の作者・堤葎子氏に創作の裏話、今後の展開などについて、話を聞いた。(あんどうまこと)

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ーー登場人物がそれぞれにいい人であるからこそ、あたたかく、穏やかな気持ちで楽しめる作品でした。加えて人として当たり前とされる生き方を俯瞰・肯定できる作品でもあると思います。本作の創作のきっかけを教えてください。

堤葎子(以下、堤):恥ずかしながら私自身が人間として不出来なので、社会に出てから「普通」に暮らすということがいかに難しいかを嫌というほど思い知らされて……。当たり前と言われることができない自分が嫌でたまらず、閉塞感でいっぱいでした。

 しかし最近になって、社会で生きるなかで感じるのは閉塞感ばかりではないのかもしれないと思い至り。私と同じような気持ちを感じていた人が少しでも楽になれたらという思いから本作を企画しました。

ーー主人公のモチーフを狸にした背景を教えてください。

堤:高畑勲監督の映画『平成狸合戦ぽんぽこ』を観るなかで、人に紛れながら街で生きることを選んだ狸たちの生活を想像すると、余りにも過酷で頭を抱えてしまいました。これは私だけではなく多くの人が共感できる苦しみではないかと思い、化け狸を主人公に据えました。

ーー本作は各エピソードはもちろん、各話の扉絵も非常にかわいいものばかりでした。

堤:扉絵は日本的なディテールや懐かしさを意識しています。本作の連載前は季節を感じられる扉絵にしようと考えていましたが、最近は自由に描いています。その中でも第1話の扉絵はお気に入りです。狸柄の古い襦袢を購入して、参考にしながら扉絵を描きました。

 
 
 
 
 
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ーー作中では三つ葉の行動や表情の1つひとつが可愛らしかったです。

堤:三つ葉はとにかく素直で、屈託のない女の子として描いています。若く無知ながらも、何故か堂々としていたり、ときにおどおどしたりする。不安定で闇雲なエネルギーを肯定できる可愛らしいキャラクターです。

ーー三つ葉と露生の関係は性や種族の違いをほとんど感じさせない、恋愛というよりもお互いに信頼を置く関係として感じました。

堤:日々の中で他人と付き合う以上、性や立場などの様々なフィルターを通さないといけないのがもどかしく感じていて……。しかしふとした瞬間、無邪気なコミュニケーションを取れた取れたときはとても嬉しく、その瞬間が宝物のように感じます。彼らには是非、そんな友情を育ててほしいです。

ーー三つ葉や露生とともに、第2巻から登場する千砂も印象的なキャラクターでした。

堤:千砂はお洒落なお姉さんとして登場させるつもりだったので、服装などはいつもよりリサーチしました。ただ手癖が出てしまい、お洒落なショートカットの髪型のつもりがどんどん毛先が跳ねてきて、収拾がつかなくなってしまいました。千砂の内面と連動していた部分もあると思いますが……今後は気を付けます。

ーーアルバイトをしながら台所に居候して暮らす日々を「これ以上無いほど幸せで!」と話す三つ葉、自分の好きなものなどを素直に表現できる露生とは対照的に、千砂はさまざまな思いを抱えている人物として描かれていると感じます。

堤:千砂はどこにでもいるような、ごく普通の女性だと思っています。

 周りから排斥されることを恐れ、かといって群れの中にいることを喜びともしていない。安心を得るために「普通」を演じる人の不安を表したキャラクターです。そんな千砂に共感していただけたら幸いです。

ーー第1巻ではほっこりとした雰囲気を感じつつ、第2巻からは千砂の登場とともに物語が核心へと進んでいくように感じました。それぞれ印象に残っているワンシーンは?

堤:第1巻は、三つ葉が露生の家で一輪挿しに活けられた花を眺めるシーンが気に入っています。第2巻では働きすぎた三つ葉が溶けているところでしょうか。

ーー読者の方へメッセージをお願いします。

堤:本作を読んでいる方へ、また第3巻から内容の風向きが変わってきますのでお楽しみに。三つ葉と露生の関係性の変化、三つ葉の成長にご注目ください!

 また、これから本作を読んでくださる方へ、可愛い狸の三つ葉を気軽に見に来てみてください! ひたむきな三つ葉を見守るなか、ちょっとでも心が楽になれば嬉しいです。

■書誌情報
『たぬきはたぬき(1)』
著者:堤葎子
価格:869円
発売日:2026年2月13日
レーベル:RYU COMICS

『たぬきはたぬき(2)』
著者:堤葎子
価格:869円
発売日:2026年7月13日
レーベル:RYU COMICS

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