『邪神ちゃんドロップキック』10周年 著者ユキヲに聞く 悪魔と人間の居候モノがここまで読まれる理由

『邪神ちゃんドロップキック(19)』(フレックスコミックス)

 人気漫画家であるユキヲの『邪神ちゃんドロップキック』が、今年で連載10周年を迎えた。それを記念し、令和4年(2022)9月11日(日)まで、丸井錦糸町店(東京都墨田区)で『邪神ちゃんテン』と題した展覧会が開催されている。

 同作はアニメも第3期が放送中で、各地で開催されるイベントも毎回超満員。北海道の釧路市や帯広市など地方自治体とのコラボも行われているほか、公式YouTubeチャンネル「邪神ちゃんねる」の登録者数が19万人を超えるなど、コアな人気をもつ。

 そして、漫画のコミックスも今年6月11日に19巻が発売され、20巻到達が目前に迫っている。新キャラクターも次々に登場し、ますます絶好調の『邪神ちゃん』。今回は作者・ユキヲに、10年目にして思うこと、展示会の見どころをうかがった。

邪神ちゃんテンの会場。白いドレスをまとった邪神ちゃんと花園ゆりねのパネルが、来場者を迎えてくれる。

――このたびは、『邪神ちゃんドロップキック』、10周年おめでとうございます。2012年4月、WEBコミックの「COMICメテオ」に記念すべき第1話が掲載されました。「COMICメテオ」で執筆を始めたのは、何がきっかけだったのでしょうか。

ユキヲ:『武蔵野線の姉妹』でお世話になっていた編集部が、WEB上に新しい媒体を立ち上げるということで、引き続き作品を描かせてもらうことになりました。その流れで誕生したのが『邪神ちゃんドロップキック』です。仕事に疲れてあまり頭を使いたくないときでも楽しめるようにと、長いストーリーものや、難しい話にはしない方向で考えました。それなら日常系の居候モノにしようと思い、漫画の基礎が決まりました。

――独特の世界観も魅力のひとつです。人間のもとに悪魔が同居するけれど、実は人間のほうが強い、という設定は連載が決まってから考えたのでしょうか。

ユキヲ:いつか居候系の漫画を描こうと思って、あたためていたんですよ。主人公の花園ゆりねも、とある雑誌の別冊付録で描いていた漫画に登場するキャラクターが原型です。いつかやろうと思っていたものを、やるなら今だと思って出した感じです。ちなみに、連載前の段階で考えていたキャラクターは、邪神ちゃん、ゆりね、メデューサの3人ですね。

ユキヲ直筆の線画も展示。ユキヲは線画を原稿用紙に描き、それをパソコンに取り込み、トーンやベタをデジタルで貼って原稿を仕上げている。

――連載が続いていくうちに、キャラクターが増えていったと。

ユキヲ:悪魔と人間しかいないので天使のキャラクターを出そうと思って、ぺこらを追加しました。ぺこらは鞭を持っていますが、当時はファミコンディスクシステムの『悪魔城ドラキュラ』を再プレイしてたので、その主人公、シモンベルモンドを参考にしました。シモンは鞭を使ってヴァンパイアを狩るヴァンパイアハンターです。それなら、悪魔ハンターのぺこらの武器も鞭がカッコイイなと思いました。

――ぺこらの設定もそうですが、作中にはユキヲ先生の趣味が随所に生かされていますよね。例えば、以前に雑誌『ムー』でもインタビューさせていただきましたが、ユキヲ先生は無類のオカルト好きでもあります。

ユキヲ:オカルトもそうですし、ゲームの『ラストハルマゲドン』や『女神転生』が好きなこともあって、それらをヒントにして登場人物を悪魔と天使に決めました。そこに人間のゆりねを組み合わせて、世界観を作りあげています。

――そして、ユキヲ先生といえばロリィタ服です(笑)。『武蔵野線の姉妹』でもロリィタ服が頻出しましたが、ゆりねの服もやはりロリィタ服ですね。

ユキヲ:とにかくロリィタ服は大好きですね。ゆりねの元になったキャラも、ロリィタ服を着ていました。個人的に、悪魔や天使の世界観にもロリィタ服は合うと思ってるので、邪神ちゃんのゆりねもロリィタ服にしました。

『武蔵野線の姉妹 完全版(上) 』(フレックスコミックス)

――邪神ちゃんはドロップキックをするのも、ユキヲ先生がプロレス好きだからなのでしょうか。

ユキヲ:プロレス好きなので、ドロップキックという技を使ってみたのはありますが、設定上はあまり深い意味はありません(笑)。語呂とひらめき的なものです。タイトルもそれほど気にせずに、なんとなくつけたんですよね。

――作品の舞台が神保町になっているのも、ユキヲ先生がよく遊びに行っていた町だからだそうで。

ユキヲ:そうですね。あと、ゆりねは魔導書を使って邪神ちゃんを召喚するのですが、神保町の古本屋街って、探せば魔導書すら売っていそうな雰囲気ですよね。そんなわけで、作品の舞台にぴったりだと思って選んだのです。

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