大人になって読む『セーラームーン』の素晴らしさ 短編「かぐや姫の恋人」を再読して

 竹内直子の『美少女戦士セーラームーン』(講談社)について多くの説明は必要ないだろう。90年代を代表する少女マンガで、いまも不動の人気を確かにしている。今回はそのスピンオフマンガの「かぐや姫の恋人」に注目してみたい。

 『美少女戦士セーラームーン』の連載執筆をしながら135ページに及ぶ「かぐや姫の恋人」を描き上げたのだから、その作業量はすさまじい。もともと93年アニメ版『セーラームーンR劇場版』をすべて任せてしまったことが武内のなかに後悔として残っていた。そして94年の劇場版『セーラームーンS』が決まったとき、原作として発表された。

 「かぐや姫の恋人」は月野うさぎの相棒の猫、ルナが主人公。ルナは落ち着いた性格をしている。感情に左右されることはなく、うさぎを始めとするセーラー戦士たちを目覚めさせ、正しい方向に導く……。セーラームーンやセーラー戦士にとっては、そんなお姉さん的存在だ。アルテミスというボーイフレンドがいて、未来にはダイアナという子猫を授かる。クールでしっかり者のルナは「かぐや姫の恋人」で初恋を経験するのだ。

 物語は愛野美奈子と木野まことの誕生日会から始まる。外宇宙星系のセーラー戦士である、天王はるか、海王みちる、冥王せつなも揃ってカフェ「パーラークラウン」で行われる。そこに遅刻してきたルナとアルテミスと娘のダイアナ。

 外に一緒に出るときは、いつもアルテミスがルナところに迎えに来る。しかし月野うさぎの恋人の地場衛に「たまにはアルテミスにルナから会いに行ってあげるといい」と言われ、昔こどもにいたずらされてルナにとっては鬼門の大通りを歩くことになる。ルナの額には三日月のマークがあり、そこにエナジーがある。絆創膏で三日月のマークを再び封じられてしまったルナ。ルナがよろよろと歩いて車に引かれそうになったとき、宇宙翔(おおぞら・かける)がルナを助ける。

 翔は工学博士で宇宙開拓事業の職員である。翔が見つけた彗星「プリンセス・スノー・カグヤ」は――セーラー戦士たちの休息である誕生日会があった日に――発見され、地球に衝突する危機が迫っているという。

 ルナはそのことを聞いてセーラー戦士たちを招集する。セーラー·ネプチューンが鏡で彗星の消滅を確認した。ルナは助けてもらった翔にお礼をしに行くのだが……。

女の子のロマン――夢を叶えたい姫子

 短編ながら「かぐや姫の恋人」には女の子のロマンとロマンスを詰めた、竹内直子の大作だ。

 オリジナルキャラクター宇宙翔と、翔の幼なじみであり恋人で宇宙飛行士を目指している名夜竹姫子(なよたけ・ひめこ)と、ルナの三人が「かぐや姫の恋人」の中心人物だ。姫子は宇宙飛行士になりたくて、ケネディ宇宙センター勤務を希望するガッツのある女性。幼少期には翔とともに宇宙飛行士になれますようにと一緒に願ったこともある。

 スペース・プレーン「ルナ」に搭乗することが決まった。目的は彗星「プリンセス·スノー·カグヤ」の破壊。姫子は自分の夢を叶えた女性だ。翔の病気を知った姫子は翔に以下のように言葉を投げかける。

……ひとりで苦しまないでよ

なんでもいってよ
あきらめるなって あなた
いったじゃない

……あたしたち小さいころから
ゼッタイ宇宙飛行士になろうって
決めたじゃないの

二人の

だったでしょ?

 翔と一緒に宇宙に行くのが姫子の夢だった。まだ姫子の想いは半分、叶えられていない。翔と一緒に宇宙に行くという夢は……。

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