ギャップ萌えにタイムリープ……盛況のラブコメに新作続々、5月のライトノベル注目作を徹底解説
清楚な委員長に、学校でも一番の美少女に元アイドルに無口な転校生。美少女恋愛ゲームだったら攻略難度がリミットを振り切っていそうなキャラクターたちと、深く知り合えてラブラブになれる……5月発売のライトノベルにもそんな、不可能恋愛に挑み突破するラブコメ作品が並んで心を浮き立たせる。
5月10日に電撃文庫から刊行の西塔鼎『ひとつ屋根の下で暮らす完璧清楚委員長の秘密を知っているのは俺だけでいい。』は、品行方正で成績優秀なスーパー委員長の黒河スヴェトラーナが、縁遠い高嶺の花どころか幼馴染みで極端な恐がりだったという設定。親の都合で彼女と一緒に暮らすことになった“俺”は、いっしょに彼女の弱点克服に取り組むことになる。学校での凜とした委員長ぶりと、プライベートでのビビりぶりのギャップを楽しめそうなラブコメ作品だ。
5月16日発売のGA文庫から出る海月くらげ『優等生のウラのカオ ~実は裏アカ女子だった隣の席の美少女と放課後二人きり~』にも、二面性を持ったヒロインが登場する。クラスで隣の席に座っている優等生の間宮優が実は“裏アカ女子”だと知った藍坂秋人は、黙っていてもらう代わりに優から付き合ってと誘われる。
優の裏アカ写真撮影に協力することになった秋人にどんな災難(それとも幸運)が降りかかるのか? 設定に背徳感をくすぐられる。ガガガ文庫から5月18日発売の冬条一『高嶺の花には逆らえない』も、タイトルからヒロインに振り回されそうな内容が浮かぶ。どちらも美少女に振り回されたい男子が読んでゾクゾクとしそうな作品だ。
5月20日にファンタジア文庫で発売の飴月『隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない』でヒロインに与えられた属性は元トップアイドル。芸能界でのファンに対する振る舞いが染みついて、クラスになかなかなじめない香澄ミルというその元アイドルを、勉強も人付き合いもそつなくこなしている柏木蓮が面倒を見ることになって始まる新生活の行方が気になる。
なじめないヒロインには、6月1日にスニーカー文庫で刊行の紫ユウ『喋らない来栖さん、心の中はスキでいっぱい。』でも出会えそう。季節外れの転校生で、無口なこともあってクラスメイトから敬遠されていた来栖瑠理菜は、心の中でクラスメイトの鏑木律と仲良くなりたいと願っていた。その律には人の心が聞こえてしまう能力があって、瑠璃菜の想いもしっかりと届いていた。瑠理菜の表向きにはツンケンした態度と内心のデレとのギャップにニヤニヤできそう。2人がどのように結びついていくのかを確かめたい。
変わり種は、ファンタジア文庫から刊行のkattern『幼馴染だった妻と高二の夏にタイムリープした。17歳の妻がやっぱりかわいい。』という作品だ。幼馴染みの千帆と結婚して幸せなサラリーマン生活を送っていた鈴原篤が目覚めると、結婚した記憶を持ったまま2人とも高校時代にタイムリープしていた。すべてを知り尽くした結婚相手が高校生になったら何をしたい? エロティックな妄想をかきたてられる設定だが、ハメを外しすぎて歴史が変わってしまわないとも限らない。ラブコメ+タイムリープという新機軸ならではのドキドキを味わいたい。
5月25日にMF文庫Jから登場の鈴木大輔『ラブコメ・イン・ザ・ダーク』も、ラブコメとタイトルについていながら異端の香りが漂う設定。現実に不満をかかえていたジローが、夜ごとに見る夢を自由に操る力を手に入れたものの、その夢に現れた謎の人物に「世界を蝕む病だ」と言われ、現実世界では転校して来た美少女に恋人宣言をされて、奇妙な状況へと導かれていく。あらすじだけでも想像をかきたてられるダークな世界に期待がふくらむ。
シリーズ物では、アニメ化が決まった佐伯さん『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件6』(GA文庫)や、『安達としまむら』の入間人間による『私の初恋相手がキスしてた2』(電撃文庫)などが登場。異世界でどのような経験をするかでさまざまな工夫が試みられていたライトノベルだったが、どのようなシチュエーションの上で少年少女にキュンキュンとした物語を演じさせるかが、今しばらく競われていきそうだ。