少年に訪れるのは呪いか、祝福か? ジャンプ+『エクソシストを堕とせない』の恋の重要性

『エクソシストを堕とせない』レビュー

 少年ジャンプ+で配信されている『エクソシストを堕とせない』(集英社)の第1巻が好評発売中だ。有馬あるま(原作)とフカヤマますく(漫画)が手掛ける本作は、現代を舞台にしたオカルト漫画。主人公は悪魔を祓うエクソシスト(祓魔師)の16歳の少年。18歳の画家・愛月イムリを守るために日本へ向かった少年は、イムリを狙う悪魔たちと対決することになる。

 劇中では、主人公の少年が悪魔と戦うオカルトバトルと、年上のお姉さんとして少年を翻弄するイムリとの楽しい同棲生活が描かれるのだが、まず印象に残るのは太い線で描かれたかわいらしいキャラクター。登場人物の頭身は低く、記号性が強調された造形となっている。背景の線も抑制されており、どのコマも一枚絵として完成度がとても高い。同時に漫画らしい画が動いているかのように見える躍動感も備わっている。

 その画力が存分に発揮されているのが悪魔との対決場面。エクソシストの少年が聖書の一節を呪文のように唱え、巨大な力を発動させて悪魔を祓う場面は、大ゴマを駆使したダイナミックなコマ運びとなっており、漫画としてのカタルシスがある。

 主人公の性格も魅力的だ。悪魔を祓うエクソシストの少年は神への信仰に殉じており、何か言われると聖書の一節を引用して応答する真面目な男の子。危険を顧みずに悪魔に戦いを挑む姿はとても勇ましく、バトルマンガのヒーローのように颯爽としていてカッコいい。だが、圧倒的な強さの裏側に、とても繊細な内面を抱えており、悪魔との戦いよりも、少年の心が揺れる姿にハラハラしてしまう。

 劇中では、色欲、強欲、嫉妬、暴食、高慢、怠惰、憤怒というキリスト教における「7つの大罪」を冠とする魔王との戦いの中で、人間の罪にまつわる物語が展開されていく。

 中でも大きく扱われているのが「色欲」。「恋をしたい」「私のすべてを変えてくれるような」「恋を」というイムリのモノローグで本作はスタートするのだが、果たして「恋」は少年にとって祝福となるのか? それとも呪いとなるのか? この「恋」をめぐる問いかけこそが本作最大のテーマだ。

※次頁より、ネタバレあり

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