科学冒険マンガ『Dr.STONE』が教えてくれた大切なこと 丸5年での連載終了に寄せて

『Dr.STONE』が教えてくれた大切なこと

 2017年3月にスタートした『Dr.STONE』(原作:稲垣理一郎、作画:Boichi)が2022年3月に最終回を迎えた。連載期間5年、全232話での完結となる。

 全人類がある日突然、石化した。それから数千年の時を経て、科学をこよなく愛する少年石神千空が目覚める。原始の時代に戻ったような世界で、千空は絶望することなく、かつての世界を取り戻すことを決意。旧友との再会、新たな出会いから仲間を増やし、千空はやがて「科学王国」を作り、文明を取り戻していくーー。

 そんな『Dr.STONE』の完結に際し、改めて作品の魅力について考えてみる。

絶望を感じさせないポジティブなストーリー

 ある日突然、石化され、数千年経って目覚めたら文明が滅んでいたら、大抵絶望する。さらに石化しても意識があるので、千空はずっと数を数えていた。自分が石化してからどれだけの月日が経ったのか。動けず、何も食べず眠らず数を数え続けて数千年。気が狂いそうなものだが、千空は石化から復活したその瞬間から生きるために活動を始める。

 そんな千空をはじめ、文明が滅んだ世界だというのにどのキャラクターもポジティブだ。これまでにもディストピア的な作品、または数千年後の世界に突然放り出されるという物語は多くあった。が、それはどうしても絶望が伴い、読者に息苦しさを感じさせる。逆に『Dr.STONE』で感じさせられたのは、ワクワクだ。

物語から伝わる“学ぶこと”の楽しさ

 原始の世界で科学なんて、と思うが、今ある科学も原始からの積み重ねで生まれたものだ。今、一切の文明がなくなったとしてもイチからやり直せばいい話……だが、想像するだけで気が遠くなる。なにかひとつやろうとしても、「あれがない」「これがない」と心が折れてしまいそうだ。が、千空はその積み重ねを恐るべきスピードで行っていく。全ての科学の知識は頭に入っており、材料さえ手に入ればどうにかなる。技術力が足りないときは、別の誰かに協力してもらえばいい。そうやって次々と科学を取り戻していった。

 そしてその科学は、多くの大人が学生時代に学んでいたことも多く含まれているのだが、実際に作品を読んでいるうちに「へえ~!」と声を漏らしてしまうことがほとんど。興味がなかったゆえに、ただ試験対策として頭に詰め込むことしかしていなかった。

 しかし『Dr.STONE』では、生活に寄り添う形で科学の重要性を説いていく。子どもたちに「自分たちでもできるかもしれない」という関心を抱かせる。「いくら大人が言っても学んでくれないのに……」と、今さらながらおもしろい漫画作品のパワーを知った。

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