科学者のイメージ変えた『Dr.STONE』の功績 壮大なスケールの物語はいよいよ佳境へ

科学者のイメージ変えた『Dr.STONE』の功績

 稲垣理一郎(原作)とBoichi(作画)が手掛ける『Dr.STONE』(集英社)は、『週刊少年ジャンプ』で好評連載中の熱血科学漫画だ。

 物語の舞台は西暦5738年の地球。全人類が石化して文明が崩壊した世界で目を醒ました天才科学者の高校生・石神千空は、科学の知識でアルコールや火薬を製造することで生き延び、仲間たちとともに科学王国を築き上げる。そして、石化現象の黒幕と思われるホワイマン(WHY MAN)を探すため「世界冒険チーム」を結成。科学船ペルセウス号で大海原へと旅立つ。

 まずは石化解除液を量産するための成分であるプラチナ(白金)を手に入れるため、千空の父が乗った宇宙船の不時着した“宝島”を目指すのだが……。

※以下ネタバレあり。 

 最新刊となる第16巻では、第12巻からはじまった宝島編がついにクライマックスを向かえた。偵察のため宝島に上陸する千空、コハク(護衛担当)、ゲン(交渉担当)、ソユーズ(宝島出身)。一方、ペルセウス号は謎の光で攻撃を受け、残った乗員は石化してしまう。生き延びた千空たちは石化の謎を解くため、まずは現地人と接触。

 島一番の美少女・アマリリスと出会ったことで、宝島は、後宮に住む頭主と宰相のイバラに支配されていることを知る。頭首にはモズとキリサメという側近の戦士が仕えており、キリサメの持つアイテムが石化の原因だと知った千空たちは、石化武器を奪おうと計画。

石化を免れたスイカと銀狼の尽力で、ペルセウス号に搭載された車両型研究所(ラボカー)を取り戻した千空たちは二手に別れ、アマリリス、コハク、そして女装した銀狼は後宮にスパイとして潜入する。

 やがてコハクたちは宇宙船を見つけ出し、内部にあったプラチナの砂金を千空の作ったミニ四駆で運び出す。そして、プラチナを受け取った千空は、石化復活液を製造し、仲間を復活させる。千空は仲間とドローンを製造し、石化武器奪還の準備は着々と進んでいた。しかし、コハクの正体がバレてしまい、コハクと銀狼は石にされてしまう。

 逃げ延びたアマリリスと合流した千空は、実は頭首は石にされており、後宮は宰相のイバラに支配されていたと知る。

 いきなり仲間が石化され、圧倒的劣勢に立たされる場面からスタートした宝島編は、千空たちが着々と計画を積み上げ、最後に大逆転を果たすという痛快な展開で、これぞエンタメという仕上がりだった。

 ついにはドローンまで登場する発明レベルのインフレもだいぶ馴染んできており、登場人物の多い他視点群像劇もそれぞれの見せ場がうまく配置されている。テーマだけでなく物語の構造自体も、理知的な運びである。

 その後、千空はイバラを敵視するモズと同盟を組み石化王国に戦いを挑むが、イバラは島全土で石化武器を発動させ、島にいるすべての人間を石化しようと目論む。激しい戦いの結果、両陣営はイバラ以外、全員石化したかに思えたが、千空だけは無事難を逃れる。

 科学王国の仲間が、同じ幅で並んで順番に石になっていくことで、石化光線の伝わる速度を千空に伝える場面は、科学漫画『Dr.STONE』の面目躍如と言える名シーンだ。

 仲間が石化していく姿をみて自分に光線がかかるのが1.8秒後だと瞬時に計算した千空はジャスト4秒後に上空3メートルまで復活液を投げ上げる。そして石化と同時に回復液を浴びることで石化から元に戻れたのだが、石化した仲間たちの手とハイタッチする千空の姿は、スポ根漫画の主人公のようである。

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