連載「月刊オカモトショウ」 いま最注目の国取り漫画『日本三國』が気になって仕方がない

オカモトショウが語る『日本三國』の面白さ

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品を月イチでご紹介する「月刊オカモトショウ」。今回取り上げるのは、ブラインドサッカーをテーマにした『ブクロキックス』で知られる松木いっかの新作『日本三國』。“崩壊した未来の日本が、まるで戦国時代のような状態になる”というシチュエーションを描いた本作の魅力をオカモトショウがいち早く紹介します!

壮大な物語で、連載が続けば10巻や20巻じゃ終わらない

――今回選んでもらったのは、松本いっか先生の新作『日本三國』。昨年12月からWEBサイト「裏サンデー」で連載がスタートしたばかりです。

 これもマンガ好きの友達に教えてもらったんですけど、既にめちゃくちゃおもしろいです。架空戦記モノということでは『銀河英雄伝説』にも近いし、三国志をモチーフにしているという意味では、中国統一を描いた『キングダム』にも通じるかもしれないけれど、すごく期待してます。あらすじを説明すると、舞台は未来の日本。いろいろな原因で日本という国は消滅して、3つの国(大和・武凰・聖夷)に分かれて戦いを繰り広げていて。簡単にいえば、日本で三国志をやっている状態ですね。

――その説明がいちばんわかりやすいですね。未来とは言え、文明はほぼ滅びていて。

 設定が興味深いですよね。主人公はいい家の出身ではなくて、もともとは農業をやっていた男(大和・愛媛群で司農官として農業に従事する青年・三角青輝)で。武道に優れているわけではなく、とにかく頭が切れる参謀タイプなんですよ。ここから政界や軍隊のなかで成り上がって、軍司として戦争の重要な局面を動かすことになるんだろうなと。そうとう壮大なストーリーになるはずだし、人気が出て連載が続けば、10巻や20巻じゃ終わらないでしょうね。そうなる可能性もかなりあると思うので、早めに紹介しておきたいなと(笑)。

――ショウさんの推しポイントはどこでしょう?

 未来のお話なのでSFの要素もあるんですけど、近代的な兵器が何もなくて。戦国時代のような状態なので、戦略・作戦が大事なんですよね。主人公の武器は理論的、戦略的な頭脳と“しゃべり”。つまり言葉で勝っていくんです。理論の立て方や言葉の使い方もすごくて、作者の方はめちゃくちゃ頭いいんだろうなと。『キングダム』の原泰久さんもそうですけど、国と国の戦いの状況や物語の作り方を含めて、全体のつじつまを合わせるのは大変だし、難しいと思うんですよ。ストーリーと作画を両方やっているのはすごいことだと思います。絵のタッチもいいんですよね。独特の味があるし、シリアスな感じもあって。しゃべりで相手を倒す場面にスカッとした爽快感があるのは、絵と物語のバランスがいいからだと思います。

――主人公の三角青輝の「図書館の本を読んで知識を得た」という設定も印象的でした。

 『群青戦記』(笠原真樹/現代人が戦国時代にタイムスリップし、戦に巻き込まれるストーリー)にも通じるところがあるかも。三角は孔子の言葉を引き合いに出したりするんだけど、それって、誰の手にも届くものじゃないですか。彼の力の源が誰でも読めるものっていうところにもグッと来ますね。あと、今の社会の雰囲気を反映しているところもあって。正しいことが通らず、いろんな思惑や得するかどうかで、人の心が踏みにじられるっていう。

――冒頭、「国の偉い人に妻を虐殺される」というエピソードから始まりますからね……。

 それこそ『鬼滅の刃』や『東京リベンジャーズ』もそうだけど、主人公はなぜ戦うのか、怒りの源がどこにあるのかが明確ですよね。絶対に倒したい、最悪なヤツがいるっていう。ヤンキー漫画はケンカすると仲良くなっちゃったりするけど、『日本三國』の主人公は復讐心を持ったまま突き進んでる。そこがはっきり見えているのもいいんですよね。

 主人公が強くなりたい理由は、延々と続く三国間の争いを終わらせるためなんです。立場が何もない状況じゃ世の中は変わらないから、上り詰めて自分が変えていくんだ!って頑張るんですよ。まさかこの漫画と現実にリンクする部分が出てくるなんて数週間前まで思いもしませんでしたが、独立、戦争、など少しだけタイムリーな話だと思います。

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