OKAMOTO’S オカモトショウ連載「月刊オカモトショウ」第4回:2021年最大の話題作・藤本タツキ『ルックバック』

「月刊オカモトショウ」第4回:『ルックバック』

※本稿は『ルックバック』についてのネタバレを含みます。

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカルとして、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウ。高校時代から現在に至るまで漫画雑誌を読み続けてきたほどの”漫画ラバー”である彼が名作マンガ&注目作品を月イチでご紹介する「月刊オカモトショウ」。今回取り上げるのは、超話題の読み切り作品『ルックバック』(藤本タツキ)だ。『チェンソーマン』で一大ブームを巻き起こした藤本タツキによる本作は、2021年7月19日にマンガアプリ「ジャンプ+」で公開され、瞬く間に拡散。一般の読者はもちろん、数多くの著名人やクリエイターが感想を投稿し、凄まじい反響を呼び起こした。今年最大の話題作といっても過言ではない『ルックバック』について、オカモトショウが熱く語る。(編集部)

真摯に生きている人同士の“共通言語”がある

——今回紹介していただくのは、読み切り作品『ルックバック』。『チェンソーマン』で知られる藤本タツキ先生の新作にして、超話題作です。

オカモトショウ(以下、ショウ):(7月19日の)朝いちばんに友達から「ショウくん、これ読んだ?」ってLINEが来て。すぐに読んで、「これ、やばくない?」って、その友達と盛り上がりました。俺も自分のインスタにポストしたし、いろんな人が感想を投稿して、あっという間に広がっていて。「いい作品がただただ広まるって、そんな世の中だったっけ?」という驚きすら覚えました。

——マンガに限らす、ひとつのコンテンツがこれほど共有されるのって久々ですよね。『ルックバック』に対するショウさんの第一印象は?

ショウ:“完璧”ですね。マンガもそうだし、映画や小説もそうだけど、短編には“何をどう描くか”が長編以上に問われるし、実力が出ちゃうと思うんですよ。『ルックバック』はテンポ感、ストーリーの内容、絵を含めて、すべてが完璧で感動しました。物語としては、学年新聞に4コマ漫画を描いていた小学生(藤野)が、“不登校の同級生(京本)が自分より絵が上手い”ということを知るところから始まります。マンガが上手いというのがいちばんの存在価値だったのに、それを脅かすライバルが現れるんですよね。その後、2人は一緒にマンガを描くようになって、プロのマンガ家になるんだけど……というストーリーですね。

——前半は主人公の藤野、京本が漫画家を目指してがんばる青春物語という雰囲気ですよね。

ショウ:藤本タツキさんは、過激というか、攻撃的、破壊的なマンガのイメージが強いですけど、じつは人間の生活や哲学、心を描くのが上手い方で。だからこそ『ファイアパンチ』『チェンソーマン』も好きだったんですよ。『ルックバック』の前半は暴力性がなくて、現実に存在しうる登場人物たちの人間性をしっかり描いて、「むしろこっちが(藤本タツキの)本領なのでは?」と感じました。

——主人公2人がマンガにのめり込んでいく過程に、同じくモノ作りをしている身としてグッときたのでは?

ショウ:まさに。マンガ家がマンガのことを描いた作品ってあるじゃないですか。『まんが道』(藤子不二雄A)からはじまり、『バクマン。』(原作・大場つぐみ、作画・小畑健)、『二次元JUMPIN’』(高橋ツトム)、『かくかくしかじか』(東村アキコ)、『重版出来!』(松田奈緒子)とか。ミュージシャンが音楽のことを歌った曲もそうだけど、そこにいちばんリアリティがあると思うし、ウソがないんですよね。それはモノ作りに関わっている人だけではなくて、読者がそれぞれの人生に照らし合わせることもできると思うんですよ。たとえば会社で営業をやってる人の人生にもつながる部分があるというか。真摯に生きている人同士の共通言語みたいなものがあるんですよね、たぶん。

——『ルックバック』が瞬く間に拡散されて強い共感を呼び起こしたのも、それが理由かもしれないですね。

ショウ:そうだと思います。「4コマ漫画を描いていた小学生が漫画家になる」という話自体はニッチなんだけど、それがこれだけ広まって、共感や感動を集めてるわけだから。俺も「わかる!」っていうシーンがけっこうありましたね。藤野は「私より絵が上手いヤツがいる」って思ってたんだけど、引きこもっていた京本に「憧れてます」と言われて、いい気分になって、また描き始めるところとか。雨が印象的なシーンで、ザ・クロマニヨンズの「雷雨決行」(作詞・作曲/甲本ヒロト)の<引き返す訳にゃいかないぜ/夢がオレたちを見張ってる>という歌詞を思い出しました。

——クラスメイトに「中学になってもマンガ描いてたら、キモイと思われるよ」の言葉にも負けず。

ショウ:あの言葉もひとつのリアルですよね。自分たちもまったくそうで。中学のときにバンドはじめて、高校生にもなると「まだやってんの?」って(笑)。自分でもそう思うけど、もうしょうがないですよね。

——藤野はプロのマンガ家、京本は美大に進学。『ルックバック』の後半で、京本が学内で無差別殺人の被害者になってしまいますが、このエピソードが、2019年に起きてしまった京都アニメーションの事件を下敷きにしてるのでは?と言われています。フィクションのなかで現実の出来事に踏み込むことについては、どう思いますか?

ショウ:素晴しいと思います。『ヒトヒトリフタリ』(高橋ツトム)というマンガがあって、総理大臣に少女の霊がとりつく話なんですよ。連載中に3・11(東日本大震災)が起きて、そこからマンガのなかでも震災や原発のことをガンガン描いたんです。“現実世界のことには何も触れない”というのもアリだけど、リアルタイムで起きたことを作品に織り込むのはすごい挑戦だし、読んでいて熱くなりますね。ちなみにOKAMOTO’Sは、時事のことを盛り込むのが苦手なんです。比喩に寄っちゃうパターンが多いんだけど、だからこそ、現実に切り込んでいける作り手はすごいなと思います。あと、『ルックバック』は時間軸の動かし方も素晴らしくて。

——藤野が「もし京本と会ってなかったら……」と妄想するシーンですね。

ショウ:あの描き方もいいんですよね。藤野タツキさんは過去のインタビューで「五十嵐大介さんが好きです」って言ってるんですけど、五十嵐さんも(マンガのなかで)独特な時間の飛び方をするんですよ。ちょっとサイケデリックな感覚もあるんだけど、それを藤本さんは汲んでるのかなって。

——なるほど。『ルックバック』のなかにoasisの「Don’t lookback in anger」という曲名を隠していたことも話題になりました。

ショウ:藤本さんは絶対に音楽好きですよね。たとえば“革ジャン、コンバース、マッシュルームカット”の人がいたら、「絶対ラモーンズ好きでしょ」って思うじゃないですか(笑)。それと同じで、「こういうマンガを描いてるんだから、音楽好きに決まってるよな」って。実際に話したわけじゃないから、勝手に言ってますけど(笑)。

——(笑)。『チェンソーマン』の第二部も今後、「少年ジャンプ+」で連載が開始されると明かされていますが、さらに楽しみになりますね。

ショウ:そうですね。『ルックバック』を読んで、「こんなマンガを描ける人はいないな」と確信したし、この先、どんな作品を描いたとしても、おもしろいに決まってると思っています。ゆっくり描き続けてほしいです。



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