東野圭吾も夢中なスノーボードや“氷上のチェス”カーリングも 冬季スポーツの魅力を伝える小説たち

 50キロの距離をスキーで駆けるクロスカントリースキーの種目で日本代表は、2002年のソルトレイクシティ五輪で今井博幸選手が6位入賞を果たしたのが最高の記録だが、堂場瞬一による小説『ルール』(実業之日本社文庫)では、2大会連続金メダルという偉業を1人の日本人選手が果たしている。竜神正人。ドラゴンとあだ名された彼は今、引退して実家のペンションで働いていた。

 そのドラゴンが復活するかもしれないと聞いた、竜神の級友でスポーツ新聞記者の杉本直樹が取材を始める。どうやら本当らしいが、理由について話そうとせず、目標も五輪ではなく天皇杯全日本スキー選手権というところに疑問を感じた杉本が取材を重ねた果て。竜神をめぐる不穏な噂が聞こえてくる。それもまた、アスリートにネガティブな意味で起こりがちなことだが、ストイックな竜神がなぜという思いも浮かぶ。

 ジャンプやスノーボードに比べて地味なクロスカントリースキーという競技を広めたいという願い。アスリートとして高みを目指したいという思い。それらが絡み合って行われた行為を認めることはできなくても、理解はできないこともない。そうした思いを一身に背負った選手たちが、どれだけの練習を積んで雪原を駆けているのかを知り、クロスカントリースキーにオリンピックという場だけではなく、日頃から目を向けていこう。そんな思いを抱かせてくれる小説だ。

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