『後ハッピーマニア』『金田一37歳の事件簿』……「35歳の壁」越えたマンガ主人公が向き合う現実
それでも生きていく主人公たち
あの勝気な天才高校生だった金田一が、いまは頭を下げてへーこらせねばならないサラリーマンとなっている姿は、ややショックだ。大人たちを手玉にとる頭脳を持ちながら、そんなスキルは営業職ではほとんど役に立たない。なべやきコンブのリトルグルメも同様だが、子ども時代には輝いたその特技も、大人になって「金になる」とは限らない。
金を稼げなければ生きていけないのが現実だ。だから、大人になると金を生む能力ばかりが優遇される。金田一やコンブはそんな現実の壁に直面して生きている。それぞれの特技を生かす道もあったかもしれないが、2人とも35歳を過ぎており、やり直しが難しい年齢設定なのも生々しい。『後ハッピーマニア』のシゲタにいたっては、職歴もほとんどないまま45歳になっているので、もっと深刻だ。しかも女性と男性では、加齢の壁の分厚さも全く異なる。
現実はきついし、人生はこんなはずじゃなかった。しかし、それぞれのキャラクターたちはそれでも生きている。なんだかんだ言って、金田一は、推理中だけは輝いているし、コンブのリトルグルメは大人の舌をも喜ばせる力があり、周囲の人々に一時の幸福感をもたらしていることも確かだ。シゲタもそうだが、そんな現実の壁が厚くても絶望しているわけでは決してない。みな一様に頑張って生きている。
しぶとく生きていれば、たまには輝ける瞬間というのがある。そういう意味では人生はいくつになっても遅すぎるということはない。リバイバルマンガの主人公たちはそういうことを教えてくれているのかもしれない。