連載「月刊オカモトショウ」年末特別版 絶対に読むべき、2021年のコミックBEST5はコレだ!

オカモトショウが選ぶ、2021年の漫画5作

『チ。―地球の運動について―』(魚豊)

※作品説明:15世紀のヨーロッパを舞台に、異端思想だった地動説を命がけで証明しようとする人々の姿を描いた作品。真理を追究する人間の熱さ、信念を軸にしたストーリー、次々と主人公が変わっていく構成を含め、大きな話題を集めている。「このマンガがすごい!2022」で第2位を獲得。「ビッグコミックスピリッツ」にて連載中。

 『チ。』もこの連載でも紹介させてもらったんですけど、その後も熱さはまったく衰えることなく、めちゃくちゃ盛り上がってきていますね。

 天動説が当たり前だった時代に地動説を証明しようとする人々の物語なんですけど、時代によって常識は変わっていくじゃないですか。今現在もそうだけど、「これが当たり前」という常識に対して、「ちょっと違うんじゃないかな」という感覚はみんな持ってると思うんですよ。『チ。』のキャラクターたちはそれを命がけでやってるんですよね。不安や怖さを感じながらも、「真理を知りたい」という強さを貫いて、それを次の人間が受け継いでいく。その姿は本当に美しいし、勇気をもらえますね。

 登場人物たちの言葉もめちゃくちゃ熱いんですよ。名言が多いし、哲学的な意味合いもすごく濃い。それは言葉のなかに人間の生き方や熱さが込められているからなんですよね。歌詞もそうで。単にいいことを書くだけではダメで、その延長線上に言葉にできない本質がないと、聴く人には刺さらない。『チ。』はそのレベルに達しているというか。音楽でたとえると、(甲本)ヒロト&マーシーに近いのかな。「ヒロトがこんなふうに歌ってる」ということを哲学として持っている人、めちゃくちゃ多いですから。

『九条の大罪』(真鍋昌平)

※作品説明:大ヒット作「闇金ウシジマくん」の真鍋昌平の最新作。主人公は厄介な案件ばかりを引き受ける弁護士·九条間人(くじょうたいざ)。半グレ、ヤクザ、前科持ちなど、一筋縄ではいかない依頼人のために解決策を追い求める本作は、司法に関する綿密な取材を重ねて執筆されている。「ビックコミックスピリッツ」にて連載中。

 『闇金ウシジマくん』が大好きで、終わってしまってすごく悲しかっただけど、去年の秋から新作が始まって。『九条の大罪』の主人公は弁護士なんだけど、『ウシジマくん』と世界線が一緒というか、すぐ隣で起きてるような出来事が描かれているんですよ。ファンとしてはそこにグッとくるし、よろこびでいっぱいですね。

 真鍋さんはやっぱり、人間の闇だったり、弱者の描き方がすごい。写実的というのかな。もちろん誇張している部分もあるだろうし、過激な描写もあるんだけど、なぜかフィクションに見えないんです。こういうマンガを描く人がいないとダメだし、描ける世の中じゃないといけないなと思います。

 主人公も魅力的で、依頼者を守るためにはグレーな行動を取ることも厭わないし、“道徳観と仕事の内容は関係ない”みたいなキャラクターなんですよ。そういう人間がいないと救われない人がいるということだし、それも『ウシジマくん』との共通点かなと。お家芸というか、ブレない筋みたいなものがあって、ある意味、安心して読めます。バンドにたとえるとラモーンズですね(笑)。ジョン·スペンサーやボ·ディドリーもそうだけど、スタイルを作ったパイオニアだからこそ、「今回も同じだ」ということに感動しちゃうんです。

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