『セスタス』シリーズが読者を熱くさせる理由ーーひたむきな姿に見る、“格差社会”を生き抜く術

『セスタス』シリーズが読者を熱くさせる理由

格差社会と呼ばれる現在(いま)を生き抜くための術(すべ)

 技来静也の『拳闘暗黒伝セスタス』と『拳奴死闘伝セスタス』を原作とするアニメ『セスタス-The Roman Fighter-』が、本日4月14日24時55分から、フジテレビ「+Ultra」ほかにて放送開始される。

 『拳闘暗黒伝セスタス』は、1997年から2009年にかけて『ヤングアニマル』で連載された「セスタスシリーズ」の第1部であり、その後に始まった第2部『拳奴死闘伝セスタス』(2010年〜)は、『ヤングアニマル』、『ヤングアニマル増刊Arasi』、『マンガPark』、『ヤングアニマルZERO』と掲載誌を移籍し、現在も連載中の作品だ。

 舞台は、17歳の皇帝ネロが即位したばかりのローマ帝国。主人公のセスタスは15歳の「拳奴」――すなわち、「奴隷にして拳闘士」という過酷な運命を背負わされた少年だが、作者はこのセスタスが、拳ひとつで自由を勝ち取っていこうとする姿を熱いタッチで描いていく(※)。

※セスタスが最初にいた奴隷拳闘士養成所では試合で100勝すること、次に売られた拳闘団では、10万セステルティウスを稼ぐことが解放の条件となる。

 興味深いのは、物語の序盤で繰り返し描かれている「壁」の存在だといえるだろう。本作における「壁」とは、たとえば『進撃の巨人』(諫山創)の冒頭で描かれているそれのように、「決して外部から壊されてはいけないもの」の象徴ではなく、むしろ「内側から崩して(あるいは乗り越えて)いかねばならないもの」のメタファーである。

 そう、天性のスピードと、師匠・ザファルから教わった拳闘のテクニック以外何も持たないセスタスは、次々と目の前に現れる強敵を闘技場で倒し続けることで、「壁」を壊し、自由を勝ち取ろうとしているのだ。そして、そのひたむきな姿は、いわゆる格差社会と呼ばれる現在(いま)を生き抜くための術(すべ)を我々読者に教えてくれる――というのはいささか強引な見解だろうか。

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