『金色のガッシュ!!』が不動の名作たる理由とは? 魔物と人間の絆が描き出す「別れの美学」

『金色のガッシュ!!』が描く「別れの美学」

 本作の魅力を一言で表すなら、「別れの美学」に尽きるだろう。“別れ”は漫画に関わらず、様々な創作物に彩を添える。信頼し合いずっと一緒に居たいと考えている者同士が、望まない別れを余儀なくされる。それによって物語は一段と深みを増すのだ。ではなぜ“別れ”が『金色のガッシュ!!』では、特に際立つのか。その秘密は物語の根幹である、“100人の魔物が人間とパートナーを組んで争い、最後の1人が魔界の王様となる”というルールにある。

『金色のガッシュ!!』(2巻)

 この戦いにおいて魔物の子供は、自分が所持している本を燃やされると魔界へと帰されてしまう。そのため魔物とパートナーは、一丸となって相手の本を燃やすべく戦う。そして作中にはガッシュだけでなく、数多くの魔物が登場した。つまり本作にはそれだけ魔物とパートナーの別れが描かれている。もちろん100体100通り全ての別れを事細かく描いている訳ではないが、作品自体が魔物同士の戦いを主軸としているため、必然的に全てのエピソードが別れに向けて動いている。

 魔物にとって人間のパートナーは、唯一無二の存在だ。パートナー以外では本の文字が読めず、呪文も発動できない。そのため魔物とパートナーは共同生活をしており、中には共に旅をするコンビもいた。魔物と人間の別れには壮大なドラマがあり、甲乙付け難い名シーンをいくつも輩出したのだ。

 また“最後の1人が魔界の王様となる”というルールにも、大きなポイントがある。それはとどのつまり「勝者でさえ最後は魔界に帰ってしまう」点だ。一般的なバトルロイヤル系の作品であれば、「死なないために戦う」であったり「大切な人を救うために戦う」であったりと、勝者は敗者と違う運命を辿るが、本作は敗北=死では無いため、勝者であっても最後はパートナーとの別れを避けられない。そのため最後は喜びに涙しながらも同時に悲しみに暮れ大粒の涙を流す。

 連載が終了し数年の月日が経つも、未だに読者の心を掴んで離さない『金色のガッシュ!!』。登場する魔物と人間の間には、一言では言い表せないドラマがあり、それが本作の魅力。魔物と人間の儚い絆が、『金色のガッシュ!!』を不動の名作へと押し上げたのである。

■青木圭介
エンタメ系フリーライター兼編集者。漫画・アニメジャンルのコラムや書評を中心に執筆しており、主にwebメディアで活動している。

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