『スパイ教室』『蜘蛛ですが、なにか?』『裏世界ピクニック』……2021年のライトノベル界を予想する

2021年に注目のライトノベルはこれだ!

 ライトノベルと言えば、誰もが思い浮かべる谷川流『涼宮ハルヒ』シリーズが、9年半ぶりとなる新刊『涼宮ハルヒの直観』を出して、大いに盛り上がった2020年のライトノベル界。田中芳樹による『創竜伝』も、1987年のシリーズ開始から32年をかけて『創竜伝 15 旅立つ日まで』で完結するなど、話題は尽きなかった。続く2021年は、どんな作品に関心が集まるのか。

 竹町『スパイ教室』(ファンタジア文庫)、二語十『探偵はもう、死んでいる。』(MF文庫J)、珪素『異修羅』(KADOKAWA)、裕夢『千歳くんはラムネ瓶の中』(ガガガ文庫)、犬村小六『プロペラオペラ』(ガガガ文庫)。宝島社から刊行されたランキング本『このライトノベルがすごい!2021』で上位に並んだ作品は、2021年も確実に、というより前年以上に強い関心を集めそうだ。

竹町『スパイ教室』(ファンタジア文庫)
竹町『スパイ教室』(ファンタジア文庫)

 スパイ養成学校で落ちこぼれだった少女たちが、世界最強のスパイの下で訓練をして危険な任務に赴き、次々と成功させていく展開に、成長の喜びを感じられた『スパイ教室』。美少女ぞろいというビジュアル的な強みもあって、ネットで公開されたPVもアクセス数を稼ぎ、知名度を上げている。凄腕の男性スパイと女の殺し屋が、エスパーの少女と家族を演じる遠藤達哉の漫画『SPY×FAMILY』(集英社)が大人気となるなど、世間の目がスパイアクションに向く中で、ラノベ界のスパイもの代表として大ブレイクといくか。注目だ。

二語十『探偵はもう、死んでいる。』(MF文庫J)
二語十『探偵はもう、死んでいる。』(MF文庫J)

 二語十『探偵はもう、死んでいる。』は、スパイではなく探偵によるアクション。ヒロインというべき美少女探偵が、物語の冒頭ですでに死んでいるという驚きを経て、助手だった少年が探偵の心臓を受け継いだ少女や、探偵をマムと慕う少女、異能力を持つ少女らに囲まれながら敵の改造人間と戦うという、ミステリありSFありラブコメありのパワフルな内容で話題になった。宇宙人まで登場して広がる風呂敷はどう畳まれる? それともさらに広がっていく? 展開から目が離せない。

 ガガガ文庫では、『このライトノベルがすごい!2021』で文庫部門第1となった『千歳くんはラムネ瓶の中』に注目が集まっているが、『とある飛空士への追憶』がアニメ映画化された犬村小六による最新シリーズ『プロペラオペラ』も、同9位と好位置につけた。

犬村小六『プロペラオペラ』(ガガガ文庫)
犬村小六『プロペラオペラ』(ガガガ文庫)

 上空1200メートル以上は飛べない世界。浮遊する物質に船体を吊り下げ飛行する船が利用され、大日本帝国とアメリカ合衆国を模した日之雄とガメリアが、太平洋戦争になぞらえられる戦いを繰り広げている。日之雄の皇籍をはく奪され、ガメリアに移り株で成功したものの、仲間だったカイルにすべてを奪われたクロトが、日之雄に戻って旧知の皇女イザヤが指揮する飛空艦に乗り、知略を駆使してガメリアを翻弄する、一種の架空戦記的なストーリーが展開される。乗員たちの望みで、皇女らの水着姿を撮影しようと作戦を練るコミカルな描写もはさみつつ、カイルが金の力で裏から操る超大国を、懸命に退けようとする展開がスリリングで面白い。

 『このライトノベルがすごい!2021』の上位には、ティーンの圧倒的な支持を集める衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ』(MF文庫J)や、1月からアニメがスタートの屋久ユウキ『弱キャラ友崎くん』(ガガガ文庫)も上位にあって、引き続き人気を呼びそう。

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