『スパイ教室』『蜘蛛ですが、なにか?』『裏世界ピクニック』……2021年のライトノベル界を予想する

2021年に注目のライトノベルはこれだ!

 ラノベにとってアニメ化は、評判となれば原作の売上を大きく底上げする。出来を見定めたいところだ。『スパイ教室』や『探偵はもう、死んでいる。』にもアニメ化の話が出れば、同様に急伸が期待できる。

 アニメ化では、「SFマガジン」2021年2号の「百合特集2021」でも看板作品として推された、宮澤伊織による『裏世界ピクニック』(ハヤカワ文庫JA)シリーズが大いに話題となりそうだ。

宮澤伊織『裏世界ピクニック』(ハヤカワ文庫JA)
宮澤伊織『裏世界ピクニック』(ハヤカワ文庫JA)

 ネットロアと呼ばれる、ネット上で流布される奇妙な話や、体験談として伝えられる実話怪談が大好きな女子大生の紙越空魚が、現実とは違う裏側の世界を偶然に発見。足を踏み入れるようになり、そこで出会った金髪美人の仁科鳥子と親しくなって、いっしょに”裏世界”へと出かけるようになる。ガール・ミーツ・ガールの要素があって、2人の関係にキュンキュンさせられる一方で、「八尺様」やら「きさらぎ駅」といったネット伝承に出会い、襲われ命の危険にさらされる恐怖も存分に味わえる。

 2020年12月25日に出た最新刊の『裏世界ピクニック5 八尺様リバイバル』には、空魚ら女子4人がラブホで女子会を開いていたら、獅子舞が飛び込んできて全員で裸踊りをしてしまった話、裏世界で八尺様を追って消えた男を探す話などを収録。奇妙な経験の合間に、空魚と鳥子との友情を超えそうな関係も描かれる。1月のアニメスタートを機会に読み返したい。水野英多によるコミカライズもスクウェア・エニックスから最新5巻まで刊行中だ。

馬場翁『蜘蛛ですが、なにか?』(KADOKAWA)
馬場翁『蜘蛛ですが、なにか?』(KADOKAWA)

 馬場翁による『蜘蛛ですが、なにか?』(KADOKAWA)も、1月からアニメが始まる人気作品だ。魔王と勇者の次元を超えた争いに、教室ごと巻き込まれて死んでしまった高校の生徒や教師が転生した先で、蜘蛛になったり勇者になったり吸血鬼になったりして繰り広げる大冒険。転生後のユニークな境遇と、そこからの頑張りで勝ち抜き成長していく楽しさなどから、小説投稿サイトの「小説家になろう」で人気となって単行本化され、300万部を越えるベストセラーになった。

 アニメで蜘蛛になったヒロインの「私」を演じるのは、『魔法少女まどかマギカ』の鹿目まどか、『幼女戦記』のターニャ・デグレチャフなどで知られる声優の悠木碧。同じ「小説家になろう」発で、アニメ化によって大ブレイクした伏瀬『転生したらスライムだった』 (GCノベルズ)のように、一段上のヒットが見込めるかもしれない。

 その『転スラ』も、アニメの第2期が1月スタート。転生して蜘蛛ならぬスライムになってしまった主人公のリムルが、力をたくわえいろいろな種族を従え一大国家を築き上げた先、リムル不在の中で戦乱が起こったり、リムルが魔王の仲間入りとしたりと、急展開していく第5巻以降のストーリーが描かれる。単行本は17巻まで出ているが、未読ならアニメのペースに合わせ、最初から読んでいく絶好のタイミングだ。

 他にも安里アサト『86-エイティ・シックス-』(電撃文庫)や、しめさば『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』(スニーカー文庫)、「小説家になろう」発で400万部を突破する理不尽な孫の手『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』(KADOKAWA)などで、アニメ化による話題の拡散が起こりそう。一方で、新人賞からは応募総数4355作品の頂点に立った、第27回電撃大賞の電撃小説大賞・大賞受賞作となる菊石ほまれ『ユア・フォルマ 電子犯罪捜査局』(電撃文庫より3月10日刊行予定)にも注目したい。

 1992年に起こったウイルス性脳炎のパンデミックから人類を救った医療技術が発達し、脳浸襲型情報端末へと進化を遂げて恩恵をもたらしている2023年の世界。あらゆる情報を記録した脳の縫い糸、通称〈ユア・フォルマ〉を探る力を持った電索官エチカ・ヒエダの活躍が描かれる。パンデミックという世相と、サイバーパンク的な描写が融合したアクションになりそう。刊行が待ち遠しい。

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。



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